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ブレーキ音が響く
「ねえ、かくれんぼしようよ」
「いいよ」
いーち、にーい、さーん、しーい……
「じゅう! もういーかーい!」
もーいいよー……
あの子はどこだろう?
ひとりぼっちであそんでいたボクに話しかけてくれた、せがひくい、たぶん年上のおとこの子。
こえは右の方からきこえてきた。たぶん、あの小さい木のうしろにかくれているとおもう。あそこにはお花がたくさんある。きれいだとおもうけど、なんとなくちかづきたくなかった。
でもあのへんにかくれてるなら行かなきゃ。
「あ」
「みーつけた」
小さい木にちかづいたらおとこの子のあかいふくが見えた。あんなにあかかったらだれでもわかる。おとこの子はかくれんぼがヘタクソだ。
「見つかっちゃった」
「つぎはボクがかくれるね」
「ううん。そろそろお迎えが来るよ」
「おむかえ?」
「ほら」
おとこの子がゆびさした先に女の人がいた。
「おかーさん!」
おとこの子とこえがかさなる。
「ねえ、いっしょに行こう」
「……」
「いこ?」
「うん」
うなずくとおとこの子はボクの手をにぎった。ボクの手は汗でぬるぬるしてるけど、おとこの子の手はもっとぬるぬるしてた。
「あら、ちょっと見ないうちに大きくなったわね。お兄ちゃんより大きいわよ」
おかーさんはあたまをなでてくれた。
「さあ、行きましょう」
ボクたちはおかーさんと手をつないでどうろをわたった。
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