星の偶像

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点滅する星の飾りが目に入った時にこう思った。明日3つ向こうの席に超超僕好みの大きなお目目の小さな手足、低身長のマーガレットを思わせる女の子が転任してくるーーー。 街に灯る数々の飾りつけに願っていない願かけをしてみた。雪雲の空を見上げてしまうときはその向うの星に向かって望んではいない願いを願ってみた。 明日に向って。 翌週のことだ。3つ向こうの席辺りに、新たな人が転任してきた。ショートヘアの目の大きな小柄の女性。 願いが、叶った? こんな事があっていいものか。 なぜか彼女の姿を見て思った。僕好みの、 僕好みの、僕好みの、やっぱり僕好みのはずの女性。 幼い頃、母に捨てられた僕。 街に出てはショーウインドーの中に立つ マネキン人形を見上げて話かけた。 今日は百点を取ったよ。 今日は友達と隠れんぼをした。 僕のマネキン、僕の友達、いつもここで僕を待っててくれる。僕の母さん。 キレイな顔、大きな目、ショートヘア。 そうだった。 僕の好みの元を辿れば、あの幼い日に 毎日話をしに行ったショーウインドーの マネキンの肖像 に背が低いというのは背があまり高くない自らのコンプレックスから来た要望が加わったもので、それら全部咄嗟に願った胸の思いに反する願いを現すものだった。 母を失った痛みなど普段は忘れている。 しかしそれに対処するようにとった幼き日の行動と憧憬は彼女を失った後というふとした拍子に蘇り、心はまたあのウインドーのマネキンに戻ろうとしたのだろうか。 すっかり忘れたことを大人になってから手に入れた安らぎの喪失が苦しみ紛れに同じような状況で対処を取ることを、本当には願っていない、胸の動きに反する願い事を唱えるようなことをさせたーーー。 そしてそのせいで?! 人は同じ行動を繰り替えすのか?
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