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運ばれてきたナポリタンをフォークでくるくる巻き取って彼女は僕の前に差し出した。
「いや、僕はいいよ。君はそういうのは平気なの?」
驚いて尋ねると、
「ええ。そうねえ、はーい、あー。」
全くイメージと違うけどどうしたんだろう、と思いつつ思わず口を開けてナポリタンを待ち受けていると、
「はーい、あげないわー。」
と、ナポリタンを巻いたフォークをUターンさせて
自分の口へ運び、バクーッと食べた。
僕は口をあんぐりさせてその様子を見ていた。
「なんてお行儀の悪い…。」
僕が言うと、また巻き取ったナポリタンを僕の口元でフラフラさせている。
僕は呆れて空いた口が塞がらない。
「はい、あげるわけないわー。」
と、彼女はまた素早くフォークを自分の方へUターンさせて、バクーッと食べた。
「なんて意地の悪い…。」
思わず口に出したらこう言った。
「やってみたかっただけよ。だって、あなたボーッとしてるんだもの。う、わ、の、そ、ら!」
そうして、くるくるとナポリタンをフォークに巻き取っては、せっせと口に運んだ。
早速少し、カップルめいた真似が出来るのか?!という期待は淡い幻想と消えた。
「あ、見て。霧が晴れてきたよ。」
外を白いミルクのような霧が引き始めうっすらと街並みの姿を見せ出した。
さーっと陽が差して霧が消えていく。
「今日は日曜だ。君とゆっくり過ごせる。いい日だな。ナポリタンを取り上げられてもこんなことで幸せ感じてる、健気な僕。涙が出てくるな。」
彼女は微笑む。
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