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「お腹いっぱいになった?今日はどうしようか。」
「工房へ行ってもいいのだけどそれは今度にしましょうか?金属加工も結構面白いのよ。お散歩にでも行く?手は繋がないけど。」
「ちょっと歩こうか。あてなく。」
「そうねぇ。以前出会った公園にでも行ってみる?」
「そうだね。かなり歩くけど平気かな。」
「途中で幾つか休憩を取ってくれるんでしょう。」
「そうだね、帰りにもし疲れたら僕の家に寄ってくれても良いよ。勿論手出しはしないけど。」
「それはよしておくわ、と言いたいけれど疲れるかもしれないわね。どうしようか。とりあえずあなたの家も含めて散策の目的にしましょうか。どんなお部屋か見てあげましょう。」
すっかり気持ちがほぐれた彼女に僕は楽しくなる。
「じゃあ行こうか。傘を忘れないようにね。きみの髪、とっても素敵に決まっているね。」
「ふふ、ありがとう。とても気に入っているのよ。普段使いするのは勿体無いくらい。でも時にはいいわよね。ドレスアップすることはあまりないもの。傘持ったわ。ちゃんと。」
僕は支払いを済ませてドアの外で待っていた彼女の元へ行った。
「お待たせ!それじゃ行くよ。」
「朝も早よから、歩いている人、結構いるわね。」
彼女は元気に歩き出したので僕も急いで横に並び歩き出す。
坂道もあり、ゆっくりと歩くには丁度いい街並みだ。流れている川の岸辺にやって来た。
川岸から水面までは階段になっていて腰を下ろそうと思えばできる。
彼女は水面へ続く階段を降りて行き、中段で腰を下ろした。
「ちょっと休憩よー。あなたも座る?」
「お隣を、拝借してよろしいので?」
「適当に離れて座ってくれるといいけど、別に隣も構わないわー。」
聞いてみてよかった。隣に座るのは、彼女の心情的に今は近すぎるのだ。少し間を空けて、別の段に腰を下ろした。なるべく嫌な思いから遠ざかって欲しいから。
そんなに密着する必要も無いことではあるし。
風が、二人の間をすり抜けた。
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