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ある真夜中、暗い部屋で窓の外を眺めて、また、空虚な気持に取り憑かれていたとき、つい、と白い光が流れ落ちた。
すると一つまた一つと白い光の流線が次々と現れては消えていく。星だ。
こんなに沢山の流れ星。一つどころではない。ただ一つの流線を捉えなくても
次から次へと現れ夜の空を流れ落ちて行く。
驚きとともに、僕はまた、願った。
また僕と失ってしまったあの彼女との未来を下さい。僕と彼女の辿る道を交差させる機会を下さい。僕に力を下さい。運命の枠を飛び越える勇気を下さい。
彼女に会いに行く力をください。
沢山の星が流れていたから、随分と長い間願いを唱えていた。
後で知ったがその夜は冬の双子座流星群だった。
心の中が透明になったような気がした。
幼い頃母に置いてきぼりを味わわされ、それを埋め合わせるように見つけ出した慰めのマネキン。語り相手。
確かに幾らかの間僕の心の居場所だった。
然しそれはいつしか過ぎ去り僕は何であれ彼女という春の温もりに出会い、僅かな時の間とはいえ、忘れ得ぬ和らぎを育んだ。
ふたりが別れる道の岐路にそれぞれに立ったときなす術なく黙って受け入れることを選んだ僕。
もし今あの時に戻ったなら閉じられたドアを開きたい。
星は流れ続ける。
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