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分かってはいても日々は過ぎていく。
この世で、彼女に出会いたくても運命を手繰り寄せる「約束」が無ければ、
こうも人と人とは、離れてしまうものか。
会えなくなっても時は意思をもたず流れて行くのだった。
交差点のない道が沢山の蛇のように長く伸びている。交わらないだだ一本の運命の道が沢山。
日がまだ短い冬はすぐに暗がりを手繰り寄せる。夕日の時間は、少なく黒く冷たい静けさが訪れ雲が無ければ星の現る夜。
「だから言ったでしょうよ。」
彼女は、つんと口を尖らせて言うだろうか。
「一緒に居てほしい。」
なんと言ったら良かったのだろうか。
そもそも繋がらない、運命のようなものではあった。
今思えば。
忘れないのは彼女の沈黙。
「不細工な僕が何を言うんだって思うかも。だけど」
二度程そんな事を言った。「ちがうよ。」
と言ってほしかったのかな、僕は。
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