星の偶像

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彼女は携帯電話を持っていなかった。 なので彼女とは直に会うしかないのだけど、 その会うのも、彼女に用がなければ会うことはなく。 幼い頃に母に捨てられ、養母に育てて貰ったことなどは彼女に話していない。 勘の恐ろしくいい彼女だから薄々なにか気づいていたかもしれないが。 しかし彼女の事情は少しながら知っている。 公園で、僕は彼女に、声をかけたのだ。 ベンチで隣に座っていた彼女。 俯いて頭を抱えていた。 なにか考え事でもしているのかと思った。 しかし、長い髪が地面についても全くお構いなくひたすら俯いて手を前にして頭を抱えている彼女に、どうかしたのかと思い、 声をかけたのだった。 「あの、大丈夫?」 彼女は顔を上げずに僅かに手を上にやった。 顔を覗きこんでみたら、目を閉じて、真っ青な顔色をしている。 手を上に上げたのは「大丈夫」という意味だろうが、どう見ても大丈夫でないようだ。 長い髪が、地面にぞろりと垂れ落ちている様子があまりに見慣れた光景とはかけ離れていて、厳妙な感を醸しだしている。 僕はなにかしなきゃ、と、公園の噴水で持っていたハンカチを濡らしてから、彼女のところに戻った。 すると僕が座っていたベンチの空いた場所に彼女は身体を横たえていた。 仰向けになって目を手で押さえている。 びっくりしませんように、と思いつつ、 あー、、僕が居たから横になれなかったのか、、と思いつつ、そうっと彼女の額に 濡れハンカチを。。
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