星の偶像

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待ってくれ僕を置き去りにしないで… 寒い冬の日に抱き抱えた僕を誰かに渡して居なくなっていく母の姿。 雪に埋もれて無くなっていく… それは寒い寒い雪の日。 ※※※※※※ 斜め下を見下ろすと、くるんとした眼の彼女が見上げていた。 大人の僕が手に入れた温もり。日の差す春の木陰のようなやさしい時間。 つかの間の幸せ。彼女とともに過ごした時。 さようなら。さようならなのに、そう言わず、これでお別れ、と他は特段何も言わず 背を向けて去った彼女。 閉じられた固いドア。 そして今。1人きりで歩く街並み。 繁華街へでると誰にともなく飾られた木やビルの窓や家々の戸口が目に痛々しく光を落としている。 頭痛が起こりそうだ。 何が悲しいかはその光や手の混んだ装飾が自分のためのものでないことだ。 街なかにぼわんと浮かぶ光を灯した木はそれでも美しい。 人は誰しも自己本位なもので 化粧を施した街の彩りが 自分に向けたものでない事だけでこんなにも心弱くなる。駄目だ。駄目だ。こんな事を考えていては。落ち着け自分。 見上げて吐く息は白い。 はあ~だめなときって何やったってダメだなあ〜。目の前の街灯は点滅しちゃってて進むべき道が暗い感じがして頭はずきずきする、 胃の調子まで悪く吐きたくなるし。 街の光に追いやられたような自分の隣にいた筈のあのひとは今はもう影もない。 それは夕暮れに没してしまった、冬に入ったある日の僕、自分の事だった。
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