序章:一年前

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序章:一年前

◆ 「僕にできることはなんでしょうか」    暗闇の中に僕は立っていた。  その部屋の灯りは確かに点いていて、机の上に置かれた紙に書かれた文字まで見えてしまうくらい明るかったけれど、それでも僕は右も左もわからず光を求めるように尋ねる。  あまりに急な出来事の連続で思考がまとまらない。  どうしてこうなってしまったんだろう。こんな未来予想図、誰が描いたんだ。 「一番、大切なことは」  白色の蛍光灯に照らされた彼はこちらを見てゆっくりと答えた。  辺りが静かに感じるのは、僕の耳が彼の言葉に縋っているからだろうか。 「絶対に諦めないことです」  彼はそう告げた。  その言葉の重みを噛み締める。  先のことなんて、誰にもわからない。 「……わかりました」  僕は小さく頷いて、絞り出すように返事をする。それしかないなら、そうするだけだ。  目の前にぼんやりと現れたそれは、小さな灯りかどうかもわからないけれど。  それでも構わないと、拳を強く握り締めた。
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