episode 7

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神谷さんと指を絡ませ夜の街を並んで歩く。 神谷さんのもう片方の手にはコンビニの袋がユラユラとぶら下がっている。 神谷さんは私から体を離した後コンビニでスイーツを買って家で食べようと私を誘った。 丁度近くにコンビニがあり私はモンブランプリン、神谷さんはホイップ入りシュークリームを買い外へ出ると私の手はまた直ぐに神谷さんの手に捕まった。 …? 手を繋いで歩く私達を通りすがりの人皆が見てくる様に感じるのは気のせいかな。 あぁ…気のせいなんかじゃ無い。 私達では無く神谷さんを見ているんだった。 神谷さんに皆が視線を送っているなんてさっきもそうだったのに、こんな風に男の人と堂々と手を繋いで歩くのはあまり経験が無かった私はついそう思わざるを得なくなっていたのだった。 自惚れなんかして恥ずかしい…と、片手で眉間を軽く叩いた。 「どうぞ。」 「あ、はい…おっと、お邪魔しま…す。」 神谷さんに招き入れられると私は緊張で靴を脱ぐ足さえもぎこちなくなっていた。 「まさか今日高井さん来ると思ってなかったから少し散らかってるけどとりあえずベッドにでも座ってて。」 「はっ、はい。」 「ふふ。」 「え?」 「いや。何でも。ビール呑む?赤ワイン美味しいのあるけど。」 「赤ワインお願いします。」 「分かった…ってそうだよな。スイーツにはビールよりワインの方が合うに決まってるよな。ワイン入りのケーキとかチョコがある位だし。」 「言われてみれば。何か根拠は無いんですけど何となく合いそうだなって。」 「もしかしてスイーツにワインが入ったのはこんな他愛の無い会話から発案されたのかもしれないな~なんてちょっと思った。」 「結構当たってたりしますよきっと。」 「かもな~。」 神谷さんのアパートには以前に一度内見で訪れた事があったから初めての感じはあまりしなかったけど実際に本人の部屋の中に入れてもらうと緊張でそわそわしてしまう。 今さっき彼女になったばかりの私。 実感など到底まだ湧いてなど来ない訳で。 スタイリッシュに統一されたセンス抜群の部屋を目にしながら私は肩に鞄を下げ持ち手を手でギュッと握ったままベッドに腰掛けていた。 「お待たせ~。最近あんまり人来なかったからワイングラス探すのに手間取っちゃった…って、高井さん鞄下に下ろしたら?」 はっとして初めて鞄の存在に気が付く。    「あはは。大丈夫?」 ベッドの前のテーブルにワイングラスを並べながら私を見て余裕の顔つきで微笑みかける神谷さん。 「だ、大丈夫です…。」 「帰って来る間にお腹の中も消化されたみたいで俺は食べられそうだけど高井さんは?後でも良いし。」 「私も食べられます。」 「そう。じゃっ、食っちゃうか。」
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