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私はベッドから床に下りて足を畳んで座るとそれを見た神谷さんがスッとクッションを差し出してくれた。
出されたクッションをお尻の下に挟むと足が楽になった。
「高井さん若いのに正座なんてするんだね。好感度上がる。なかなか見ないよフローリングで正座する子。」
なんて事を言われた。
自分も真似しようと神谷さんもやって見せたけれどものの二、三分で挫折していた。
「駄目だ足がやばいっ。あ、はい。高井さんワイン。」
「ありがとうございますっ、神谷さんは楽にして下さいね足。」
神谷さんからグラスを受け取ると今夜私達は二度目の乾杯をしてスイーツに手を伸ばした。
カパッと蓋を開けるとカスタードプリンの上にモンブランの細い線が丁寧にぐるりと巻かれておりてっぺんには小振りな栗が一つ控え目に乗っかっている。
スプーンを手に取りそのプリンに乗るモンブランの一帯をすくって口に運んだ。
「良い顔するね。高井さん。」
「いや何かもうスイーツは何時でも私の味方だなって感じてました。」
「分かる。仕事で疲れてる時、とにかく早く回復したい時にすがる物は甘い物…スイーツ様々だよな。」
神谷さんはまだワインを楽しんでいてシュークリームには手をつけていない。
きっとお楽しみにとっておいているんだろうな。
「そうだ。先日お父さんの誕生日会をやったんですけどプレゼント渡すなり直ぐに中身見てとっても喜んでくれてました。」
「そおかっ!なら良かった。あれマジでお洒落だったもんな。気に入らない人は居ないって位俺も喜んでくれる自信あった。」
「なんだかこうやって顔の側にケースを添えて自慢げに見せびらかしてきました。」
私はモンブランプリンの器を持って真似してやって見せた。
「あはは。相当気に入ったんだねお父さん。きっと良い娘だな~って誇らしく思ってるんだろうね。俺も娘として高井さんが欲しい。」
「え?彼女としては要らないんですか?」
「あっ!今彼女って言ってくれたね。嬉しい。」
カァ~ッ。
「照れてる照れてる。その誕生日会…弟君も居たんだよね?」
「居ました。拓は拓で大学やらバイトやらで忙しくしてるみたいなんですけど時間作って来てくれて。最近はなんだか私の友達とちょくちょく会ってもいる様で。」
「そうなの?高井さんの友達ってあのこの間の子?」
「はい。あの子です。ケーキ屋さんの一花です。」
「もう付き合ってたりするの?」
「はい…。」
「だよね、部屋に二人で居たしなこの前。そうかぁ…そういう段階に入った訳か。」
「そういう段階?」
「あぁ、いや、こちらの話。」
そう言うとグラスに入ったワインを口に含みシュークリームの袋に手を伸ばした。
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