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「ホイップ入りシュークリーム…だって。」
神谷さんはパッケージをまじまじと見ながら一人呟いている。
私も横から顔を覗き込むと可愛らしいフォルムの文字でその様に書いてあるのを確認した。
けれど何かが引っ掛かっている神谷さんはシュークリームを前に動きが止まってしまっていた。
「神谷さんどうかしたんですか?」
「あぁ…うん。俺シンプルにシュークリームが食べたいなって思って買ったつもりなんだけどホイップ入りだったこれ。」
「ホイップ食べられませんか?」
「食べられるんだけどシュークリームはカスタードクリームだけで食べたいんだよね俺。ま、いっか。」
仕方なさそうに諦めて袋を破き始めた。
お目当ての品が手に入らなかった神谷さんのそんな横顔が何だかとても可哀想に映ってしまった。
すると。
「高井さんと弟君は姉弟だけど血が繋がっていないから当然似て無いし端から見たらカップルと変わらないよね。」
拓と私のそんな事を話してきた神谷さん。
「そうなんです。そう言えば前に一度だけ買い物に付き合ってもらった時に仲良く会話しながら街歩いていたらカップルに間違えられた事がありました。」
「やっぱりね。高井さんって弟君と普段どんな話してるの?」
「どんな…?例えばお父さんの話とか共通の友人関係の話とか。誰にこの間彼女が出来てとか…まぁ、良くある内容ですね。」
「買い物に付き合ってくれる程お姉さん想いで仲良しなそんな弟君は自分の恋愛事情も良く話していたの?」
「それが肝心のその話だけは自分からは話さなくて。一花と付き合ってるって知ったのもたまたまで…はは。」
「姉としては弟君の恋愛事情は知っておきたいものだよね。異性の立場からアドバイスも出来るしさ。」
「そうですね。」
ガサッと袋からシュークリームを出し半分に割る神谷さん。
「でも。何で話さなかったか分かる?恋愛事情を。」
「え?」
私はグラスに伸ばした手を思わず引っ込めた。
神谷さんの顔からは笑顔は無く私をただ見つめていた。
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