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何で話さなかったか…拓は私に…?
心当たりは…あった。
だけれど私が考えている事がそうだとしても神谷さんは拓と何か話をしたのだろうか?
私は凄く気になった。
神谷さんと拓は今迄に二回程会っていたけど初めましてとその後で果たしてそこまで深く突っ込んだ会話をするだろうか?
今の私に対して神谷さんの物言いは私と拓の間にあった全ての出来事をまるで見ていたかの様な口振りで私は密かに動揺していた。
そんな雰囲気を纏った神谷さんだけれど彼女となった今余計な心配をかけまいと私は平然を装う。
「あれですよ、あの、口下手なんですよ拓は。多分それが関係してるんだと思いますよ。」
私はそう言うと再びグラスに手を伸ばす。
「…本当は弟君の気持ち気付いてるんじゃない?高井さん。」
ゴクッと呑み込んだワインが逆流して口から出そうになる。
「ゴホッ、ゴホッ。」
「分っかり易いね高井さんは。あはは。」
テーブルの下にあったティッシュペーパーを私に差し出す。
「すみ、ま、せん…はぁ。」
「大丈夫っ?」
「大丈夫です。私はその、神谷さんに心配かけたくないと思っていてだから…。」
「そんなとこだろうなって思ってた。高井さんの性格上ね。うん、俺は大丈夫。だって現にこうして付き合えた訳だし。」
「すみません。」
謝る私に神谷さんはそっと笑いかける。
「弟君はお姉さん想いだったんだね。自分も他に目を向け出したって事はさ。結果高井さんにもきちんと幸せになって欲しいと望んだんだよ。」
「そう…ですね。」
「うん。弟君は高井さんと家族で居る方を選んだ。」
「…。」
「あ~でも安心した。これからは思いっきり高井さんを独り占め出来そう。」
頭をポンポンと叩かれ私は肩をすぼませる。
そして神谷さんから新たにワインが注がれやはりカスタードクリームだけで食べたい神谷さんはシュークリームのホイップの部分をスプーンですくわせて私はそれを食べた。
ホイップだけでも凄く美味しくて次はこれを買おうと考えていると横から口元に感触を覚えた。
神谷さんの指が私に触れている。
「付いてる…ってか結構がっつり。」
「えっ、や、やだ…っん。」
ティッシュを取る僅かな時間も与えられず神谷さんの唇が重なっていた。
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