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あれから俺は橋本に顔を合わせずらくて何日もこちらからは連絡を取らないでいると向こうから会いたいとメッセージが来て橋本の実家で会う約束をした。
バイトは休みで大学から電車に乗りその足で橋本の家に向かう。
何時もショーケースの売り物のケーキをおやつに頂くのが申し訳ないのとこの間の事もあって俺は途中地元の駅近くの和菓子屋さんで塩豆大福を買ってそれを手土産にする事にした。
橋本も講義が終わり次第直行する事になっているが俺よりも大学から地元迄距離がある為時間潰しに駅前の本屋に入った。
毎週発売されている少年マンガを当たり前の様に手に取ると奥へと進み本棚に並べられた沢山のタイトル名を端から見ていく。
『君にも分かるネット販売の始め方』
『一から始めるネット販売』
『ネットで起業しよう。』
どれも似たようなタイトルで内容も差ほど変わらない気がして適当に一冊引き抜いてレジに並んだ。
分からない事をスマホで調べながら進めていたがそればかりでは無く本の方でも知識を広げておきたいと思い購入に至った。
紙袋を抱えて本屋を出ると良い時間になっており俺は橋本の家へと足を運んだ。
「拓っ。」
信号待ちをしていると後ろで名前を呼ばれ振り向くと橋本が笑顔で俺に追いついた。
「遠くから見覚えのある後ろ姿が目に入ったから走って来たの。」
そう話す橋本は自然でこの間の件を全く感じさせ無い。
「おぉ…お疲れ。」
「ん?それ。本屋さん?」
「あぁ…うん。早く着いたから寄って来た。参考になれば良いかと。」
「そうだったんだ。何か嬉しい。そういうとこも尊敬するな。」
「大した事してないから。これ位普通。」
「そうやってサラッと言えるのも何か格好良いかも。」
「良くない良くない。全然格好ついてない。それに隙を見てマンガも読もうとしてるしな…ははは。」
袋からチラリと見せる。
「なる程ね。そういう企みがあったのか。」
橋本と話す俺はいつの間にか余所余所しさも無くなり気が付くと橋本の家の前に到着していた。
「いらっしゃい拓哉君。」
橋本のおじさんが店の奥から顔を出して来た。
「こんにちは。またお邪魔します。」
「どうぞ。何時も一花と仲良くしてくれてありがとうね。ケーキでも食べてゆっくりしてって。」
「あ、今日は買って来ました。おじさんの分もあるので後で食べて下さいね。」
「そうなの?それはありがとう。じゃあコーヒーだけ持って行くから。」
「あぁ…いいから。自分でやるからさ。お父さん仕事あるでしょ。」
橋本は少し冷たくあしらうと俺の背中を押しながら二階へ上がる様にと急かした。
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