episode 7

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…ん? 歩いて暫くすると誰か女性が声を上げて何か言っているのが聞こえる。 その声のする方は俺が今から向かう方向から聞こえて来た。 こんな人気の少ない道に女性の声。 …まさか。  頭に橋本の顔が過る。 だけど俺を家の前で見送ってその後は一歩二歩またげば家の中へと入ってしまえる距離。 何か事件に巻き込まれるなんて考えられない。 だとすると一体さっきのあの声は誰だったんだ。 妙な胸騒ぎがしてタッと地面を蹴って車の姿が無いのを確認すると赤信号も気にせずに橋本の家に走った。 走っても走っても何故だか一向に縮まってくれないこの直線の道が憎らしい。 息を切らし、やがて間隔の空いた少ない街灯が遠くから薄らと人影を映し出す。 橋本の家の前で。 ボォッと映し出された人影は二人。 俺はとにかく走った。 そして次第に二人の顔がはっきりと認識出来る距離迄辿り着いた時、俺は目を疑った。 「拓っ、助けて!知らない人なんだけどいきなり何か拓の事言ってきてっ、、」 目の前に居たのは橋本に掴みかかっている亜由美だった。 その顔は怒りで満ち溢れている表情で…でもあと少しでわっと泣いてしまうのを手前の所で堪えている様なそんな風にも見えた。 「亜由美っ、ちょっ、お前何やってんだよ。」 とにかく俺は橋本に掴みかかっている亜由美の手を離す。 亜由美はなかなか離そうとはしなかったが男の力に等敵うはずもなくあっさりと俺に降参した。 沢山聞きたい事、話したい事があって何から話出したら良いかも良く分からず。 でも少し考えとりあえずどうしてここに居るのかを先に知りたくて下を向き俯く亜由美に俺は少し強めの口調で話始める。 「亜由美。お前何で橋本の家の前に居るんだよ。」 「拓の方こそどうしてこんな子と一緒に居るの?…大丈夫なの?」 俺の顔を下から涙目で見上げて来る亜由美。
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