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「拓おはよう。ねぇ、昨日夜連絡したのに…寝てたの?」
大学に着くなり亜由美は俺を見つけると俺の腕をぐいぐい掴んで離さない。
毎朝こんな感じで来るもんだから左隣に座っている友人の敏樹ももう呆れを通り越して笑ってしまっている。
「痛っ、痛い。手離して。」
「ヤダ。」
上目遣いで俺の顔を見てくる。
「右手負傷出来ないからさ。」
「負傷って…そんな馬鹿力じゃ無いでしょ!酷い~朝から~、いや、昨日の夜から~。」
あぁ…朝から面倒くさ。
すると敏樹がこそっと。
「(こういう時はとりあえず謝ってデートに誘うで機嫌直るぜ。)」
「…。」
「(そんな顔すんなよ…あ、ほら、亜由美ちゃん泣きそうになってるぞ。)」
「…寝てて返事出来なかったごめん。」
「本当に寝てた~?誰か女の子と遊んでたんじゃないの~?」
「遊んでねぇよ。」
「はっ、怖い~拓~。」
「(早くデート誘えって。)」
敏樹も横でちょろちょろと…はぁ。
「今日…あの喫茶店行くか?」
嘘みたいに顔が明るくなる亜由美。
「うん!行く行く!絶対行くからね!」
「はいはい。」
おれは喜ぶ亜由美を尻目に余計な用事が一つ増えたと内心既にぐったりしてしまった。
ここ最近本当に二人で会う事が窮屈で仕方が無いんだ。
「じゃ、後でね~!」
足取り軽やかに教室を出て行く亜由美。
一通り見ていた敏樹が口を開く。
「拓さ。最近亜由美ちゃんに構ってあげてないだろ?」
「最近というか…前から。」
「はは。お前何で付き合ってんだよ。」
「う~ん…。何でだろうな。告白されたから…かな。」
亜由美は好きで付き合っている訳じゃ無かった。
亜由美には悪いけれど。
だから亜由美に対して気持ちが入っていないから面倒くさくもなるんだきっと。
「ほぉ。イケメンが言うとそれはそれで納得してしまうんだよな何故だか。ま、とにかく今日は亜由美ちゃんとデートして来いよ。」
肩を軽くポンと叩かれた。
今日行く喫茶店“ミント”は何十年とやっている店でコーヒーは勿論の事パフェやフードもとても美味し。
家の大学に通う生徒なら知らない者は多分居ない位に有名な喫茶店だ。
そこへ行くと決まって亜由美はチョコレートパフェを注文する。
俺はコーヒーを啜りながらパフェを頬張る亜由美を無表情で見ているだけ。
美羽と来たいな…。
そんな事を頭に浮かべながら。
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