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店内に居るお客様も来店されるお客様も大分落ち着きふと壁に掛かる時計を見ると既に一三時を回っていた。
ついさっきお客様の波に混じって一花が二階に上がって行ったのが見えた。
「ふぅ。じゃあ美羽ちゃんお客様も落ち着いたし一花とご飯食べておいで。」
「はい、分かりました。お先に頂きます。」
おじさんに言われて裏の荷物置きにあるお弁当袋と水筒を持って二階へ上がって行く。
何時も土日で朝からバイトに入る時は家で作った手作り弁当を持って来ている。
少しでも引っ越し費用の足しになればとこんなとこも節約をしていた。
引っ越し。
瞬一さんのアパート。
もうあそこだけにこだわる事も無いんだけれど。
最初からこだわっていた訳では無いけどお付き合いが始まるにつれて私もこのアパートに住めたら何時でも会えるのにな…なんて思ったりしていたのだった。
トントン。
「はぁい。どうぞ。」
「一花久しぶりだね。」
「そうだね。入って。」
久しぶりに見た一花は相変わらずで私を招き入れると自分も何処かで買って来たお弁当を広げて二人は食べ始めた。
一花の真正面で唐揚げを頬張る私を箸を止め瞬きもせずにジッと見つめて来る一花。
「え?」
「あ、いやいや。」
「何何?」
「美羽何か良い事あった?神谷さんとか。」
一花はそういう所が鋭い。
「実は…お付き合いしてます。」
「やった!!だと思ったんだよね~。良かったね美羽。」
「ありがとう。」
私と瞬一さんの事を自分の事の様に喜んでくれる一花は私にとって本当に良い親友だ。
でも普段何でも話せる一花だけど今から私が聞こうとしている内容についてこんなにも緊張が走るのはきっと拓の事だからかもしれない。
なんとか平然を装いお弁当を口にしながら聞いてみる。
「そうだ。最近の拓なんだけどさ、」
「…っつ。」
急に食べるのを止めて一花が一瞬躊躇う姿が目に入る。
「一花?え…拓が最近疲れてる事知ってそうな感じだね。」
「あ…うん。」
「元気も何となく無くて。体調でも崩してるのかなって。」
「美羽は拓から聞いてるかな?私達も付き合ってるんだ実は。」
あぁ…やっぱり本人の口から聞くと知ってはいても受け入れる迄に時間がかかってしまう。
だけど…瞬一さんを好きな気持ちに変わりは無かった。
それをしっかりと自分の腹に落とすと私は一花に続けて質問していく。
「…うん。知ってる。それで二人の間に何かあったの?」
そう聞くと一花は食べかけにも関わらず箸を置いて長々と話し始めた。
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