episode 8

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「内定決まったのか。やったな!」 教室で敏樹が俺にハイタッチをしてくる。   「ありがとう。そっちはどうだった?」 「俺はまだ連絡待ちですんごい落ち着かない。でも拓の内定祝いに久しぶりに飯食いに行こうぜ。」 「なんか悪いな俺が先なんて。ま、敏樹が決まったらそん時はまた改めて行こうぜ。じゃあ最近忙しくて飯も行って無かったし今日は行くという事で。」 「だな。それより…亜由美は?最近教室に顔出さないよな。」 俺の周りをキョロキョロと見渡す敏樹。 「あぁ…この間別れた。」 「マジかよっ!?泣かれて大変だっただろ?」 「大変…だった。色々と。」 「お、おぉ。亜由美かなりお前にぞっこんだったからな。だからなんか別れ話想像しただけで恐ろしいぜ。はは。でも昨日亜由美を見たけど元気そうにしてたぜ。」 「そうか。それは安心した…。」 橋本にこの間言われた事をあれからずっと考えていた。    俺が責任を感じるのは当然で橋本や亜由美に対して誠意を尽くす事が当たり前だと思っていたし、それが俺の二人への謝罪の形だと。 だけどそうじゃ無かった。 こちらが誠意を示せば示す程橋本は困惑していくばかりだった。 きっと亜由美もそう感じていた。 橋本と平行して亜由美にも会っていたある日、突然スマホに連絡が入った。 もう大丈夫だから…と。 亜由美に対して決して嫌な事をした覚えも無かった俺は理解に苦しんだ。 二人にそんな態度を見せられて俺の中の収まらないやり切れない気持ちは再び宙に浮いてしまった。 そんな毎日でも今自分にとってやるべき事はあってその大事な一つ一つの事を熟して行くしか無かった。 橋本にも言われた通りに。 そして時間は過ぎ去り昨日内定の連絡が入ったのだった。 暫く連絡を取っていなかった橋本にも内定が決まった報告を一応しようと思い俺はズボンのポケットからスマホを取り出し橋本にメッセージを送った。 自分の事に目を向け就職も決まった俺に橋本は少しでも会いたいと思ってくれれば嬉しいのだが。 だけどそんな俺の思いは橋本には届かなかった。 数日後。 俺と橋本は別れた。
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