episode 8

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「美羽ビール呑む?」 「うん…わっ!」 瞬一さんがガラッと冷蔵庫を開けると沢山の種類の缶ビールがびっしりと詰め込まれておりその中から適当に二缶手にし棚からビールグラスも取ってテーブルに置いた。 その沢山あるビールはどうしたのかと聞いてみると瞬一さんの同僚や友達が連日の様に転勤の決まった瞬一さんに会いに家に来て吞み会をしては置いて帰るのだそう。 「皆いくら俺がビール好きだからって持って来すぎだよな。引っ越し迄にさばききれないよ。美羽も沢山吞んで協力して下さい。」 「あはは。分かりました。限界迄今日は吞みましょう。」 「頼もしい。」 「まぁ、とは言っても無理しないで。あ、ほら、弟君にお土産で持って帰っても良いしさ。呑めるんでしょ?ビール。」 「あっ、うん。呑めるよ。私よりも全然強いな拓は…。」 「そうなんだ。じゃあ紙袋に何本か入れておくから帰る時忘れないようにして。玄関前に置いとく。」 「ありがとう。」 そう言うと瞬一さんはシンク下の物入れから紙袋を取り出して入るだけの缶ビールを詰めてくれた。 一花と別れたばかりの拓にビールでも持って帰って気分転換でもしてくれたら私の気も少しは収まるんだけどな。 帰ったら直ぐに拓に渡してみよう…。 「…。」 ふと視線を感じ瞬一さんを見上げた。 するとその瞬間目を反らして紙袋を手に玄関前に向かった。 そして早く吞もうと私をリビングに呼んだ。 今夜は瞬一さんの家に行く事にはなっていたが少し残業がお互いにあって遅くなってしまったので途中スーパーで割引きになっていたお弁当を買いビールと一緒に夕飯を済ませようという話になった。 瞬一さんは唐揚げ弁当を私は鮭と銀ダラの西京焼き弁当を選んで食べた。 最近のスーパーのお弁当はどれも美味しくてハズレが殆ど無いに等しい。 瞬一さんから唐揚げを一つ貰って私も鮭と西京焼きを少しあげてそれぞれ口に運んだがとても満足だった。 唐揚げとお魚はお酒との相性も良くしかも忙しかった日のアルコールは最高に美味しくて私も瞬一さんもビールが進む。 気が付くとテーブルには様々な種類の空き缶が並べられていた。 「美羽も珍しく結構呑んだよね。帰れる?」 「大丈夫。ほろ酔いだから。平気。」 すると私の顔を覗き込みながら。 「別に泊まっても良いんだよ。こんなピンクの頬した美羽は外出すの危なくて俺。」 そう言って来た。 私は思わず両手で頬を触った。 「本当に?顔に出てる?」 「出てる出てる。目も潤ませて俺誘われてる…の?」 「えっ、いや…、」 「そういう事であれば喜んで頂きます。」
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