episode 8

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「っく、た…く、待って…。」 「美羽っ、しっかりしろっ、俺はここに居るだろっ?」 かなりの高熱だという事はさっき抱き上げた際にこの腕から感じた。 額から滴り落ちる汗は一向に止まず俺は最初に水分補給をさせようとベッドに膝を立てて寝ている美羽の上半身を両腕で抱き締める様な体制で起こしそのまま胸の中に収めた。 美羽を余り動かさない様にサイドテーブルに置いたミネラルウォーターを後ろ向きで取り蓋を開ける。 俯いている美羽のおでこに手を当て上に持ち上げると少しずつ水を流し込んで行った。 ゴクリと喉元が上下するのを見計らいながらそれを続ける。 気が付けば半分近く減っていた。 次に体温計を取りシャツのボタンを胸元まで外し左脇に差し込むと間もなくして音が鳴り表示された数字を見る。 40.1℃。  熱い訳だ。    朦朧とする訳だ。   呼びかけに対し反応を示す様子はあるものの意味深な発言をしたりと俺は少し困惑気味だった。 救急で病院に連れて行った方が良さそうだな…でもさっきテーブルに薬が置いてあったのは飲んだという事にして良いだろう。 だとすると薬が効いてくる迄あと少し様子を見てそれでも体調に変化が無かった場合は病院に行く事にしようと俺の中で決断に至った。   胸元迄外したボタンを留めていくと手の甲にポタリと雫が落ちて来た。 顔を覗き込むとどうやら額の汗が流れ落ちたみたいだった。   近くにタオルが無かったのでズボンのポケットからハンカチを取り出して美羽の額を優しく押さえた。 もしやと思い背中に手を回して平で触れるとジトッとしていた。 このまま寝ると余計に悪化すると思い美羽を一先ずまた寝かせ寝巻きを探すとベッドの隅に大雑把に畳まれた状態で置かれていた。 再度美羽の上半身を起こし体を胸で支え真正面から見ない様にしながら服を脱がして行く。 露わになった汗ばむ背中をハンカチで軽く拭って体が冷えない内に早めに寝巻きを着せた。 寝巻きのズボンも美羽を寝かせスカートを下ろしてサッと履かせた。 最後に額に冷却シートを貼り掛け布団を掛けて人通りやるべき事を済ませると俺はヘタっと床に座り込み美羽の顔を覗き込む。 はぁ…とりあえずこのまま様子見だな。 まだ肩で息をする美羽を見ながら一時も離れずに俺は側で付き添った。
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