episode 8

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私が体調を崩してから三日目。 要約熱も下がりまだ少しのふらつきは残るが今日から仕事に行くと決めた。 社会人だし学生の様にそんなに長くは休めない。 周りに迷惑がかかるだけだ。 それに瞬一さんが転勤になる為仕事の引き継ぎなんかも少しはあったりするので一日でも早く職場に戻りたかった。 朝支度を済ませリビングへ向かうと拓が私とすれ違う。 「おはよう。」 「…はよ。美羽体調大丈夫?仕事行くのか。」 「うん。もう熱は下がったし余り休んでもいられないの。」 「そっか。仕事忙しいんだな。あんまり無理してぶり返さない様に。」 「ありがとう。瞬一さん…あ、神谷さんが転勤になるから私の方にも少し引き継ぎとかあってバタバタしてて。」 「神谷さん転勤するんだ。」   「うん…。」 「寂しい…よな。」 「そうでも無いよ…なんて。神谷さんは男だしこれから仕事でもっと出世して行く人だからね。これはその為の通過点。私も私でこっちで仕事頑張ってスキルアップしようと思ってる。だから寂しいとか言ってられないし私も…。」 本当にそうだと思っているのに拓の前で話したら建前を並べている様に思えてきて拓から目を反らした。 「あっ、忘れてた。」 「ん?」 「美羽が熱出してる時神谷さんから電話があった。美羽の鞄の中で何回もスマホが振動するから誰か緊急の連絡をしてきているのかと思って出たんだ。で、その相手が神谷さんでさ。」 「あぁ、そういう事だったら大丈夫だよ。今日瞬一さんに会うからその時話しするし。」 「遅くなってごめん美羽。」 「良いよ。」 「ありがとう。じゃあ行ってくる。」 「うん。気を付けてね拓…。」 私は玄関の扉がガチャッと閉まるまで拓を見送った。 私もリビングに戻って朝食を済ませ休んでいた分の仕事を片付けなければと何時もよりも十五分早く家を出た。 会社に到着しフロアーに向かって廊下を歩いて居ると後ろから呼ばれて振り向く。 「あっ、瞬一さんおはよう御座います…じゃ無かった神谷さん。」 思わず辺りを見回す。 「はは…大丈夫、誰も居ないから。おはよう高井さん。体調はすっかり良くなった?」 「お陰様で。お休みしてすみませんでした。」 「いやそんな事は気にしてないんだけどさ。あの朝一緒に歩いていたはずの高井さんが全然出勤して来なくて心配してたら休むって連絡が入ったって聞いてさ。寝冷えでもさせちゃったかと思って反省してたよ。」 「いえ、私の体調管理がなって無かっただけの話なので神谷さんのせいでは無いですよ。」 「そう…ま、でも元気になって良かった。今晩何か栄養のある物食べに行こう。予定空いてる?」 「はい。大丈夫です。」 「分かった。じゃ、何か探しておくよ。昼休みにでもメッセージ入れとく。」 「楽しみにしてます。」 そんな会話を朝から交わしお互いデスクに向かって行った。
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