episode 8

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薬膳鍋を食べきり二人の好物のデザートもメニューの一番後ろのページにあったけれどまた前みたいにコンビニのスイーツを買って瞬一さんの家へ行く事になった。 まだ体調が本調子では無いのでデザートを食べたら帰るつもりだった。 瞬一さんに薬膳鍋をご馳走になった私はコンビニのスイーツをお返しにご馳走した。 瞬一さんの家の近くのコンビニで買ったのでアイスでも良いかと私はバニラアイス、瞬一さんは濃厚プリンを選び家へ向かう。 瞬一さんが鍵を出しガチャリと玄関を開けると私が忘れて行ったビールの袋が廊下の端に置かれているのが目に入った。 今日は忘れずに持ち帰らないとな。 リビングへと入り鞄とコンビニの袋を床に置くと私は洗面台を借りて手を洗う。   洗面台の鏡に映る自分の顔がまだなんとなくしゃきっとし無いのは体調だけが原因では無さそうだった。 「美羽ビールはどうする?」 キッチンから冷蔵庫を開けてビール片手に瞬一さんが聞いてきた。 「今日はやめとこうかな。瞬一さんだけ吞んで。」 「分かった。じゃあ遠慮無く。」 冷蔵庫を閉めて自分の分の缶ビールと私の分の緑茶のペットボトルを手にしテーブルに置くとコンビニのスイーツも広げて二人で食後のデザートタイムが始まった。 プシュッと缶ビールを開け私の緑茶と乾杯して瞬一さんはグイッと勢い良くビールを流し込んだ。 最初の乾杯からなかなか口を離さない瞬一さんを側でじっと見ているとやがて顔が真上を向いて持っていた缶ビールからクシャッと缶の潰れる音がした。 「…はぁっ。」 「一気になんて凄い。」 「何かすっきりするんだよこれやると。」 「すっきり…。」 「うん…あ、先食べてて。俺ビール持って来るから。」 「うん。」 瞬一さんはまた直ぐ缶ビールを開けると勢い変わらず喉に流し込んでいく。 私はアイスの蓋を開けながら横目でその様子を訝し気に見ていた。 口から離しカタッとテーブルに置き瞬一さんもプリンの蓋を開け豪快にすくって食べ始める。   そしてまたそのプリンを流し込むかの様にビールを煽り飲み干してしまった。 私はまだ一口も口にしていない間の出来事だった。 空いた缶ビールを片手で二つ掴むとスッと立ち上がりキッチンに缶を捨てに行ったかと思えばガラッと冷蔵庫を開ける音がしてこちらに戻って来た瞬一さんの手にはやはり缶ビールが握られていた。 迷う事なく当たり前の様にビールを呑む瞬一さんに私は思わず口を開いた。
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