episode 9

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拓とそれからお父さんの看病のお陰で数日後私はやっと回復した。 病院で出されたお薬が良く効いて体がすっきりとしてふらつきも収まった。 お父さんの買って来てくれるプリンも美味しかったし拓の卵粥が本当に美味しくてそれもあってか体重が1㎏増量してしまった。 朝仕事に行く準備を部屋でしているとサイドテーブルの上におかれたスマホが振動して手に取ると瞬一さんからメッセージが入っていた。 ────────。    朝入って来た瞬一さんからのメッセージで仕事が終わったら喫茶店で会いたいとの内容だったので私は会社から少し離れたその喫茶店に向かっていた。 今日はずっと外に出ていた瞬一さんだったので久しぶりに今から顔を合わす訳だけれど気まずさが優先して顔の強張りが増すばかりだった。 会社から歩いて暫くすると古い民家を改装した趣の有る喫茶店が見えて来た。 鉢植えが至る所に並べられておりそれに沿って歩いて行くと入り口が見えて中に入る。 店内に入ると瞬一さんが私に控え目に手で合図を送っているのが目に入った。 うんと頷きながら瞬一さんの元へ向かう。 椅子に座るなり私はメニューを見ずに店員さんに瞬一さんと同じカフェラテを注文した。 鞄を横に置きいざ真正面に座る瞬一さんの顔を見上げると想像とは真逆の何時もの優しい瞬一さんの顔があった。 私は安堵して肩の力が抜けていった。 すると瞬一さんの方から口を開いた。 「美羽体調はもうすっかり良いの?」 優しい声だ…。 「うん。もう本当にすっかり復活したよ。お休みしてごめんなさい。」 「仕事の事は別に構わないけどさ。体調第一だしな。」 「ありがとう。」 「今日どうしても美羽に話がしたくてさ。俺もなんだかちょこちょこ残業やらあるのと美羽もケーキ屋さんのバイトとかあってお互い時間が取れなくなるだろうと思って。」 「そうだね。あっ、そうだ。引っ越し先は決まりそうなの?」 「うん。向こうの不動産屋には遠くて何回も行けないから時間ある時にネットで探したりしてピックアップしてる。」 「なるべく会社と駅に近い場所が良いよね。」 「そうだな…ねぇ、美羽。」 「ん?」 いきなりカタッとテーブルの上に身を乗り出して私を見つめながら瞬一さんは言った。 「俺と結婚して下さい。」 「け、結婚…て…、あの、」 すると私の指に触れながら。 「俺と一緒に行かないか?」 「…っ。」 「美羽が好きだよ誰よりも。」 「…。」 「大切にする。」 瞬一さんの一つ一つの愛のある言葉に私は息が止まる。
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