episode 10

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episode 10

フワリと春風にでも吹かれたかの様に俺は美羽に包まれる。 「拓…私は拓が一番大切。」 「美羽っ、どうし…、、」 「拓が好きなの。」 「…っ。」 俺は何時だって美羽を求めて来た。 それは永遠に終わりの見えない俺の勝手な想いのはずだった。 でも俺を見上げる美羽が俺を好きだと言った。 すると頭と心が追いつかないで言葉に困っている俺の首元を両手でグイッと引き寄せ美羽が俺の唇を奪った。 体が固まり美羽にされるがままの俺だったが美羽の柔らかな唇をやっと理解すると解れていく体は美羽を力強く抱き締める。 行き交う人々の波の中で俺達二人だけを残してまるで違う世界に居るかの様な感覚。 駅のアナウンスも電車の入って来る音も人々の会話も全てが遠いい。 俺と美羽だけの時間が流れる。 ─────。 そっと美羽が俺から唇を離しても俺は美羽を抱き締めたままで。 今度こそ離さない…もう離さないと…。 ふと終着駅の記された車両が目に入る。 「海…見たいな。」 「海…?」 この電車の終着駅が昔三人で遊びに行った事のある海のある駅だというのを思い出した。 「昔父さんと三人で夏休みに遊びに行ったあの海。覚えてる?」 「覚えてる。」 「行かないか?」   「行く。拓と一緒に行きたい。」 すると俺は美羽の華奢な手を取ってホームに停車中のその電車に二人乗り込んだ。
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