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目を開け髪を括り露わになった首筋から目が離せないでいる俺はふとこちらを振り向く美羽と目が合い体が風にひんやりとした。
先に風に当たっていたせいか湯冷めしそうな俺は窓から離れると部屋のテレビをつけた。
野球を見ようとリモコンを操作している手が止まる。
「父さんに連絡して無いよな…。」
「うん。して無いまだ。」
「美羽と一緒に海に来てるって伝えても良い?後、今晩は近くの民宿にも泊まるって。」
「…良いよ。」
少しの間があってでも美羽はそう返事をしてくれた。
俺はスマホを取り出して父さんにそのままを伝えた。
電話に出た父さんは何時もと変わらない様子で俺の話を聞くとすんなりと電話を切った。
家族なのだからと父さんはそれで済ませて終わるのかそれとも美羽と二人きりの夜を過ごす事に何かを思い考えてしまうのかは俺には分からなかった。多分美羽も。
会話を終えるとガラッと音がして美羽が窓を閉めてテレビの前に座った。
けれどもう野球は終わっていてドラマやバラエティ番組しかやっていなかった。
バイトばかりでドラマなんかは殆ど見れない俺は適当にチャンネルを回していくが結局どの番組もピンとこなくて美羽にリモコンを託すと美羽は思い出したかの様に話し出した。
「拓、トランプ!トランプやってないよ。やろうよ。」
「忘れてた!やるかスピード。」
コンビニの袋から買って来たトランプを出すと赤と黒に分けてお互い良くきって渡す。
「いっせーのーせっ!」
掛け声と共に目の前に出ている数字を必死で追っかける。
美羽は一見おっとりしている様に見えて意外と反射神経が良くスポーツも好んでやるから神経衰弱とか頭を使うゲームよりもこういうゲームが向いている。
俺はその反対の頭脳系を得意とするので美羽に離されない様に食らい付く。
「3,4,5…あぁっ、出せるカードが無い。」
「6,7,8,…あと9!良しあと一枚。」
美羽のカードが残り一枚俺のカードは後五枚はあった。
「いっせーのーせっ!はい、私の勝ち!」
やっぱり美羽が勝った。
「もう一度やろう。」
美羽を相手に負けず嫌いが発動した。
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