episode 10

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「じゃあ、今度は拓にハンデあげる。同じ数字があったら二枚重ねて出して良いっていうルールね。」 何戦やっても中々美羽には勝てない。   あと少しの所で負けてしまう。 そんな俺を哀れに思ったのか終いにはハンデを貰うことになるとは。 トランプを始めて既に一時間近く経っている事など気にも留めない程に俺達はトランプにのめり込んでいた。   ただ純粋にトランプを楽しみ美羽は顔をくしゃくしゃにして笑いそしてそこに俺が居て。 誰にも何一つとして邪魔などされないこの空間が俺には貸し切りの風呂よりも比べ物にならない位に贅沢な幸せな時間だった。 「はぁ~、駄目だ、もう降参。美羽には勝てないや。」 「あはは。今回も私の勝ち!」 「わっ、一時間近く遊んでたんだな俺達。流石にちょっと疲れたな。」 「楽しかったね…さて、そろそろ歯でも磨いて来ようかな。」 トランプを片付けると美羽はすっくと立ち上がり洗面台に向かった。 歯を磨きに行った意味を考え就寝の準備を始めるのだろうと思った俺は自分に買ったTシャツに着替えた。 下はGパンを脱いでトランクスだけで寝るつもりだったけど一人部屋で寝る訳じゃ無く側に美羽がいるんだという事を頭に入れていなかった。 下はGパンを履いたままで着替えを終えた。 そして布団を敷こうと襖に手を掛け中を覗くと布団が四組入っていてその内の二組を引っ張り出して下に下ろした。 テーブルを端に寄せて隣同士に二枚並べる様にして布団を敷いていく。 二つ並べられた布団を上から見下ろすと途端に胸がドキッとしてフィッと顔を反らしてしまった。 亜由美や橋本の時とはまるで違うこの騒がしい気持ちに心臓がもつか心配になる。 「拓次どうぞ…って、思ったより足が寒いかも。なんかスースーする。」 歯磨きを終えた美羽が買って来たメンズの白いTシャツに着替えて出てきた。    想像してはいたが実際の方が遙かに美羽は色っぽかった。 「みっ、美羽、上も寒そうだけど羽織る物あるの?」 「あ、うん。鞄の中に何時も持ち歩いているカーディガンがあるから大丈夫。」 「そう。なら良いんだけど。あ、じゃあ俺も歯磨きしてくるかな。」 美羽を直視しないようにして洗面台に行く。
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