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おばさんはハムとウィンナーを焼いた物とスクランブルエッグ、そしてサラダをちょこんと乗せたプレートを美羽と俺に出してくれて俺達は全て平らげる。
だけどパンが少し余ってしまいキッチンペーパーに包み袋に入れて持たせてくれた。
コーヒーを頂きながらお会計をし最後の一口を飲み干す。
「そうだ美羽、おばさんにパンのレシピ聞かないの?」
「あ、うん。聞いてくる。」
「俺先に部屋戻ってるね。」
「分かった。」
美羽は奥に居るおばさんに聞きに行くと俺は二階へと向かった。
美羽がレシピを聞いてこの部屋に戻って来たら俺達二人の夢の時間は一時停止する。
今日は平日でこれから帰ってもまだ父さんの帰宅時間には到底早い。
なので父さんに話をする迄の間に沢山の事を考える時間はあった。
沢山の事…。
いや、それはもうとっくに考えて来たんだ美羽も俺も。
つまり言うべき事は一つだけで。
父さんに伝わって欲しいと願いを込めて。
ただ素直にこう言ってみようと頭に浮かぶ言葉があった。
俺達二人は惹かれ合っていると。
その気持ちは固いって。
例え父さんが納得しなくても変えられないし変わらないのだと。
俺はそう心に決めて今夜父さんの帰りを待つ事にした。
美羽にもきちんと俺の考えを伝えてから。
暫くして美羽が小さな紙を手に部屋に戻って来たので俺の考えを話すとうんと頷いてくれて俺は安堵した。
二人は荷物を鞄に詰めると下に行きおばさんに挨拶をして民宿を後にした。
駅へ向かう俺の背中から波の音がしていつかまた三人で笑って訪れる日を想像する。
ホームに辿り着くと間もなくして電車が入って来た。
二人の想いがどうか届きますようにと車内へ一歩踏み出した。
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