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俺は揺るがぬ気持ちで伝える。
でもその表情からは父さんの気持ちが読み取れなかった────。
俺と美羽はあれから地元の駅に戻りスーパーに寄って帰宅した。
家に着くと俺は部屋で大学の残りの課題に手を付け美羽はたまってしまった洗濯物を片付けたりキッチンで夕飯を作ったりしていた。
美羽と二人で家の玄関をくぐった時まるで感じた事の無い張り詰めた空気がこの家にあった。
ふと隣で靴を脱ぐ美羽の顔を見ても同じくそう感じている様に思えてならなかった。
それもあって俺は気を紛らわそうと期限がまだ先の課題をやる事にしたのだった。
────────。
リビングの方からご飯の炊けた音がしてきて時計を見上げると十九時になる所だった。
もう直ぐ父さんが帰って来る時間だ。
今日は残業は無いと連絡が入りそれ以外何も無ければ予定通り帰って来る。
俺は部屋を出るとリビングに居る美羽の側に行き優しく抱き締め背中を擦った。
すると美羽も手を回して俺の背中を擦ってくれた。
「大丈夫…きっと大丈夫。」
そう囁く美羽に救われる。
ガチャ。
玄関の方で音がした。
ただいまと廊下で父さんの声がした。
美羽から体を離して美羽はキッチンに俺はリモコンを掴みテレビをつけた。
「いい匂いだな。今日は何だ?荷物かな?」
「お帰りお父さん。うん。荷物とかお肉も少し焼いたりしたよ。直ぐ並べるね。」
「そうか。じゃあ着替えてくるな。」
父さんは部屋に行きリビングに戻ると椅子に座り俺も隣に座った。
テーブルにおかずが並び美羽が最後にご飯をよそってくれて俺と父さんに渡していく。
用意が整うと美羽が座り三人で食べ始める。
缶ビールをプシュッと開けクイッと上に傾ける父さん。
カタッと缶ビールをテーブルに置くと昨日の事を話し始めた。
「昨日は海楽しかったか?」
一瞬美羽と目が合いドクンと脈が大きく鳴る。
「うん。楽しかったよ。」
「急に行こうって話になったのか?」
「うん。そうだよ。」
父さんの問いかけに素直に応じていく。
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