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父さんはあれから缶ビールをまたおかわりしてドラマを見ながら寝てしまった。
ソファにダランと横になる父さんに美羽がそっと掛け布団を掛けてくれた。
そして特に何をする訳でも無くなんとなくまだ寝たく無くて一緒に美羽の部屋に行った。
テーブルの下にひかれたラグに腰を下ろし両手と両足で美羽を後ろ向きにして囲むと安心出来た。
今夜は良い意味で疲れたなと美羽の香りで癒されていると。
「私ね。最初拓を好きになってしまったら家族が家族で無くなっちゃうんじゃないかって不安だったの。」
「知ってるよ。俺も同じ事を思ってた。美羽と一緒に居られなくなると。」
美羽は振り向き俺を見上げる。
「でもやっと二人の気持ちが重なったんだ。美羽は俺のたった一人の愛する人で大切な家族なんだよ…これからもずっと。
何も変わらない。今迄通り仕事から帰って来てリビングでビールを呑む父さんが居てその横で父さんと一緒に野球を見ている俺、そしてキッチンで料理を作る美羽が居る…これが俺達二人の未来なんだよ。」
美羽は声を抑えながら俺の胸で泣きじゃくった。
泣いている美羽の俺の服を掴む手が震えていた。
美羽はきっと俺以上に家族の事、父さんの事に対して悩みもがいて来たはずなんだ。
それが今夜解き放たれ美羽が美羽で居られる日常を取り戻せた。
良かった…本当に良かった。
美羽を苦しめたのは俺でもあったから。
俺の中で今までの全てをその涙で流してしまえば良い。
俺は一時だって美羽を悲しませはしないと強く思った。
君を想う程に愛おしい。
何度この胸の中に納めても何度手で君の肌に触れても愛しくて…君が。
───────────。
その夜。
美羽が夢に出て来た。
美羽に触れ愛を囁き同じベッドで一緒に眠るそんな夢だった。
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