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「亜由美?」
何でここに?
「そんな困った顔しないで。」
俺は亜由美に自宅を教えて無い。
「どうして…?」
どうして分かったんだ?
「ど、どうしてって拓に会いたくて来たんじゃない。」
敏樹か…?
「こんな時間にか?」
「今さっきおばあちゃん家から帰って来たからこんな時間になっちゃったの。拓に連絡しようかどうしようか迷ったんだけど直接来た方が早いかなって思ってさ…迷惑…?」
キラキラとしたピンク色のアイシャドーがふんだんにつけられくっきりとした二重の亜由美は上目遣いで俺を覗く。
今日はバイトも忙しく帰ってベッドで横になりながら好きなスナック菓子でもと楽しみに帰って来たのに何でお前の顔を最後に見なくちゃならないんだ…と今にも口からそんな言葉が出てきてしまいそうなのをこらえつつ、自宅が分かった経緯を探ってみる。
「俺ん家…あぁ、そっかそんな話した事あったよな。」
「話?」
「…いや勘違い。あ、財布忘れた時に見たのか。」
「見た…?」
はぁ。やっぱり敏樹かよ。あのおしゃべり。
すると亜由美がキラキラとした目元でまた覗き込んでくる。
「もしかして敏樹君が拓の家教えてくれたと思ったでしょ?」
「違うのか?」
「違わないけど…。正確には敏樹君達かな。拓に会いに教室に行った時があって敏樹君を含めた男の子達が拓の話していてその話の中で拓の家が何処でって言うのをたまたま聞いちゃった、聞こえてきちゃった…みたいな。」
つまり亜由美は俺と家の話をした訳でも以前に亜由美の部屋に財布を忘れた時に免許証を見た訳でも、敏樹が故意的に教えた訳でも無かったって事かよ。
はぁぁ…。
心の中で俺の一生分の溜息が出た。
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