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翌朝────。
目覚ましよりも先に目が覚めてしまった私はぼんやりとする頭で昨日の拓とあの女性との事を思い返していた。
可愛く着飾った今時の女の子だった。
キラキラしていた。
でも一瞬目が合った時私に攻撃的な視線を送って来たのには驚いた。
誰なのこの地味な人って。
確かに社会人の私とあの子を比べたらそんな風に思ってしまってもおかしくない。
拓はああいう華やかな感じの子がタイプなのかな。
今迄聞いたこと無いんだよな拓の好みの女性。
もしそうだとしたら今以上に私ももう少し身なりに気を配ってお化粧とかも頑張って…。
『彼女が来たっていうのに…』
玄関扉をパタンと閉めた時聞こえてきたあの子の声。
その言葉が昨日の夜から纏わり付いてくるせいでなかなか寝付けなかった。
寝不足のかったるい体を感じ仕事を休んでしまいたい…いや、というよりも拓に彼女が居たという事実に私は信じられない位の喪失感を覚え何も手につかなそうだったのだ。
そしてそんな胸の片隅で拓を取られてしまうという焦り…嫉妬が私の中で産まれていた。
拓は“弟”なんだから。
私は“姉”で家族なんだから。
…あぁ。
良くあるロス的なものよねきっと。
仲が良ければ情も入るしだから。
ドクン…。
拓の胸の音を覚えている。
思い出すと何故か私もドクンと胸が熱くなった。
ピピピ…。
目覚ましがようやく鳴った。
パンッと両手で顔を叩いてベッドから起き上がる。
考えない考えない。
仕事に行くんだ今日も──────。
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