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昨日に引き続き今朝も拓の事でぐっすりと眠れない日が続いた。
でも…神谷さんて不思議だ。
一時だけではあったけれど魔法でもかけられたみたいにふわっと安心感をくれて私はその時確かに心が軽くなったし何を悩んでるんだろう…なんて思ってしまった。
神谷さんとチョコに感謝しないとな。
「おはよう高井さん。」
神谷さんが鞄を机に置きながら挨拶をしてきた。
「おはようございます。」
私は引き出しから神谷さんの為に持って来たマシュマロを手に取りもう一度神谷さんの方を振り向く。
「神谷さん。これ昨日のチョコのお返しです…って言っても比べられない安さなんですけど。」
「ん?あれ?これって中にチョコとかイチゴジャムとか入ってるやつじゃない?知ってるよ。たまに食べるからさ。」
「知ってました?値段も安くて買いやすいので大好きなんですよ私。まだ沢山あるので欲しい時言って下さいね。私は何時も気に入るとファミリーパックを買うので。」
「ありがとう。じゃあ朝飯の代わりにこれ食べるから休憩の時またちょうだい。」
「良いですよ。うふふ。」
そう言うと神谷さんはポイポイッと口の中にマシュマロを放り込んだ。
「やっぱり上手い。あっ、そうだ。会社の近くのスーパーだけど今日特売日って書いてあったよ。」
「本当ですか!?帰りに寄って行こう。」
「そうか…そうだよな。一人暮らしは生活費のやり繰り工夫しないとだもんな。偉いよ高井さん。」
「え?あの私一人暮らしはしてないです。」
「嘘っ?!いや、俺てっきり特売日だの何だの言ってるからそういう事かと思ってたよ。そうなんだね。じゃあお母さんも娘と一緒になって特売日に走り回っているって訳か。」
「…お母さんも、それから実の父も亡くなってて。」
「えっと…うん。なんか俺が話を広げすぎたごめん。今度で良いからゆっくりと話そう。大丈夫?高井さん。」
とても優しい安心する低い声で私にそう話してくれる神谷さん。
「はい。そうしましょう。楽しみです甘い物巡り。」
私がそう言うと柔らかい笑みを浮かべて神谷さんはパソコンに向き直った。
空気がよめる。
いち早く顔色をキャッチしてその場を円滑に進めていける。
営業に居るからこそ…だからなのか。
少し違うかもしれないけれどでも神谷さんは本当に素敵な大人なんだよな。
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