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「拓…?」
後ろで呼ばれて振り返る。
静まり返った図書館に女性の声が聞こえた。
地元の図書館は老朽化が進み新しく建て直したばかりで最近良く通っていた。
勉強で使う本を物色していて周りに気が回らなかったせいだろうか…いや、当時よりもかなり垢抜けた品の良さそうな女性に変わっていたせいだ。
「っ…!?橋本…か?」
棚から取ろうとしていた本を一旦戻して失礼かとは思ったが食い入る様に見てしまった。
「久しぶりすぎるね!」
「ほ、本当だよな。え、確か中学ぶりか?」
「うん、そうだね。」
「高校は皆バラバラだったし大学も確か下宿してるって美羽に聞いた事あったな。」
「そうなの。行きたい大学が家から遠くてさ…だからバイトと仕送りで何とかね。」
「偉いな。」
「そんなこと無いよ。それより拓、背伸びたね。なんか小さいイメージだったから驚いた。」
「橋本の方こそ最初誰だか分かんなかったぞ。何か女になったよな…。」
見る見るうちに赤く色付く顔は子供の頃の橋本のままでなんだか懐かしくなる。
「そうやって誰よりも顔直ぐ赤くなるの変わって無いし。あはは。」
「だって拓がらしくない事言うから。そんな会話出来るような年齢にお互いなったんだね私達。」
「そうかもな。」
橋本は脇に抱えている本に目線を落としながら俺に。
「それ以外にまだ本探す?」
「いや…うん、もう良いかな。これだけ借りてくる。」
「そ。私は今借りて来た所なんだ。拓これから予定ある?」
「いや、無いけど。」
「コーヒーでも飲みに行かない?久しぶりで色々話したいんだよね。」
「良いよ。じゃ、入り口で待ってて。」
橋本の誘いで俺達は図書館近くのチェーン店のコーヒーショップに入った。
店内は混んでいてテーブル席は全て埋まっている感じだった。
半分諦めかけていた時ふとカウンターに目をやると運良く二席空いているのを確認出来た。
荷物を先に置いて席取りをして俺達はレジに並んだ。
お互いコーヒーを頼んで席に座ったその時。
「よっこらっ…しょっ。」
橋本がそう言いながら席に座ったのが可笑しくて。
「あはは!お前よっこらしょって何歳だよ。」
すると笑った俺を見ながらまた赤い顔をして。
「だっ、だってこの椅子私には高くて座るの大変なんだもん。」
「そっか、そうだよな…降りる時も気を付けろよ。手貸すからさ。」
そう言うと片手で私を支える様な素振りをした。
「う…ん。ありがとう。」
あれ?
止めてよ。
急に男の余裕見せてくるの。
それに成長して整った横顔で微笑まれると変に意識しちゃうし。
そんな優しい目で見なくて良いから。
美羽にも向けているのかな。
この眼差しを。
何だか少し…羨ましいな。
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