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「それで。橋本は家のケーキ屋お前が継いでいくのか?」
「ううん。継がないよ。」
「そうなのか…俺たまに食べるけど本格的で本当に美味しいよな。だからちょっと残念かも。」
「そう言ってくれて両親も喜ぶと思うよ。ありがとう拓。」
今も家のケーキを食べてくれている事が嬉しかった本当に。
「拓何ケーキ好きなの?」
「俺?俺はこのなりで恥ずかしいけど…ショートケーキ。」
この混み合う店の雑音にかき消されてしまうかの様な小さな声で口をモゴモゴさせて言う拓。
「あは。けど男性で好きな人たまにいたりするよ。定番に落ち着くんだよね最後は。私もそうだし…ていうか全部好きかな私は。家のケーキ娘からしても美味しいと思うしね。」
「うん。それとクッキーとかマドレーヌとかの焼き菓子とかも美味しかったし。ネット販売とかしないの?」
「考えた事もあったみたい。だけど両親二人でやり繰りしてるから色々と広げると忙しくなるかもって手出してない。」
「橋本なんかネットとか得意そうだけど。」
「私?まぁ、やろうと思えばネットショップ開けるかもだけど両親が何て言うかな。」
「橋本はさ、今は継ぐ気無くてもそっちの道もあるってなんか良いよな。ああしたいこうしようとか考えていく工程が凄く楽しいだろうなって。しかも一緒にやっていく相手が両親だから気もそこまでつかわなくて大丈夫そうだし。」
「うぅ~ん。確かに一から挑戦していくのは嫌いじゃないよ。だから正直たった今拓からそう言われて有りかもなって頭を過った。」
「やれよ!やった方が良いよ。あの味は皆食べたいと思う。」
「まぁいずれやるかもねっていう事に今はしておこうかな。多分忙しくなるからその時は拓も手伝ってよね。」
冗談半分で言ってみた。
「当ったり前。」
「っつ…。」
また…。
さっきよりもはっきりとした笑顔をくれる拓。
止めて本当に。
気持ちが止まらなくなるから。
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