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玄関を出ると吹いてきた風が冷たくて肩をすぼめてしまった。
今日は結構肌寒いんだ。
中に居たから分からなかったな。
一度家に引き返して上着を持ってこようかとも思ったけれど神谷さんを待たせる訳にも行かずそのままエレベーターに乗ってしまった。
エントランスから外に出ると目の前にグレーの乗用車が止まっておりその前で神谷さんがニコリと爽やかにこちらを向いて立っていた。
何時ものスーツ姿の様にジャケットは着ているがその他は街中を歩いている男性と変わらないラフな感じで神谷さんに似合っていた。
私は低めのヒールで更に駆け寄りながら。
「おっ、おはよう御座います。」
力み過ぎて少し大きな声になってしまった。
「お!気合い入ってるね。おはよう高井さん。」
「なんだか神谷さんこの格好凄く似合ってますね。スーツ姿しか見ていないので新鮮です。」
「本当に?じゃあ明日からこんな感じで出社しようかな…なんて。駄目だ俺営業マンだから。高井さんも雰囲気違うよね…髪下ろしてるとことか。全体的に今日は完全にデートスタイルだ。」
今はっきりと神谷さんの口からデートって。
神谷さん私色々考えてたんですよ。
デートなのかそうじゃ無いのか。
でも神谷さんがそう思ってくれているのであれば今日のこの日はデートという事にしておきます。
神谷さんが助手席の扉を開けてくれたので私は緊張しながら乗り込む。
神谷さんも続いて乗り込みシートベルトを締める。
顔と顔が近づくとドキッとして私は直ぐさま前を見る。
普段机を並べて隣で座ってはいるけれど車の中はそんな距離よりもかなりお互いが近い事に気が付く。
「シートベルト締めた?」
「は、はい。」
「よし。じゃあ出発しよう。」
「よろしくお願いします。」
「先ずはこの間話していた高井さんのチョコをゲットしに行こう。目的達成してからの方がゆっくりあっちこっち行けるしね。」
「ありがとうございます。」
「俺楽しみすぎて朝ご飯コーヒーだけ。」
「神谷さん運転なのに大丈夫ですか?フラフラしませんか!?…でも、食べる気満々ですね。」
「俺さ口だけじゃなくて本当の甘党なんだ。だから朝から健康なんてお構い無しにチョコとかケーキとか食べられちゃう。やばいかもな…あはは。」
「すっ…凄い。本物だ。健康診断とか引っかからないんですか?えっと何だかコレステロール値。」
「あぁ。うん。何故か不思議と平常値。検査の前日だって食べてるのにさ。」
お茶目に舌をペロリと出しながらそう言った。
神谷さんのたまに出る可愛い一面を見た。
前にも増して神谷さんという人に益々接しやすくなれる様な気がした。
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