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車内で私達は余り仕事の話はせずに芸能人の話や学生時代の話等で盛り上がっていた。
「神谷さんて高校生の時どんな男の子だったんですか?」
「俺が高校生の頃は…あっ、背が十八センチ伸びた!バレーボール部入っててもっと背の高い奴とかざらに居たけど。」
「凄い。男の子の成長って本当驚かされますよね。食べる量も増えるし。お米炊いてもまた炊いて…みたいな。」
「高井さん弟とかい…あ、いや、うん、そうなんだよ。家の母親毎日米炊いても足らないって確か言ってたな。学校弁当だったしな。なんか思い出してきた。しかもその弁当箱がでかいのなんのって。運動会によく見かけるあのパックのお重みたいな入れ物を毎日食べてた。それ食べてもまだ何故かお腹いっぱいにならないんだよな。あはは。」
「さすが。高校生の胃袋は底無しですね。」
「それでさ。そのお弁当の隅にちょこんと入っていたお菓子がまた楽しみだったんだよね。ちょっとした遊び心で母親がデザート感覚で入れてたみたいなんだけどさ。」
「良いな~。お弁当の後のお楽しみですね。何が入ってたんですか?」
「一口サイズのバウムクーヘンとかグミとか後はえっと…あ、クッキーもチョコも入ってたな。」
「全部甘い物だ!」
「気付いた?多分俺の甘党は高校の頃のあの弁当から始まった様な気がしてならない。それまではそんなに甘い物興味無かったしな。」
「お母さんも甘党ですか?」
「うん。」
「だとしたら神谷さんにも甘い物好きになってもらって一緒に甘い物食べたかったのかもしれないですね…なんて思ってみたりして。」
「…そう言えばたまにケーキ買って来て一緒に食べてるなぁ。あながち間違って無いよ高井さんの言ってる事。」
「なんとなくそうかなって…ふふ。でも大人になって親とそんな風にテーブル囲んでケーキ食べるなんてお母さん相当喜んでいると思いますよ。男の人で甘党って余り聞かないので好きになってくれて嬉しいんですねきっと。」
「俺も色々と嬉しいけど…。」
神谷さんは信号を待っていたほんの僅かな時間私の方に顔を向けてニコリと笑って見せた。
「色々と…?」
するとその後直ぐに車は動き出し流れる様に走って行く。
「ここ抜けたから後はそんなに混まないで行けるかな。とは言っても休日だからそれなりにはね。多分店内も列が出来てるかもな。」
「大丈夫ですよ。またその列に並ぶのも楽しかったりするので。」
「その気持ちなんか分かるな。」
「共感出来て良かったです。」
先程から私の肌を強く照らす日の光。
そしてその窓に目をやると都会のビル街から緑の多い景色に変わっていた。
それを見て私の鬱々とした胸の中が少し晴れていくようだった。
神谷さんに連れて来てもらって本当に良かったな。
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