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「おはよう。今日もありがとう美羽。」
「おはよう。今朝はお父さんの好きなメニューにしたよ。」
ニコリと微笑む美羽。
父さんも起きて来たので三人でテーブルを囲む。
「いただきます。」
卵の半熟加減が丁度良くて美味しい。
「やっぱり美羽は何を作っても美味しいな。」
嬉しそうな顔をする美羽を見て安心する俺が居る。
美羽が普通の女の子の様に笑って、沢山おしゃべりして…今みたいなそんな光景をあの時は想像出来なかったから。
三人でこうして食事をしている時が俺的に嬉しい事でもあった。
母さんと離婚をして父さんと二人で暮らし始めた頃この四人掛けのテーブルがとても大きく感じて寂しかった。
でも美羽が来てからはその寂しさは何処かへ消えて行った。
座っているだけで周りが自然と明るくなる様な…そんな存在感を放つ美羽だから…。
皆が座る席は大体決まっていて美羽の真正面に父さんが座りその隣に俺。
何時もそんな感じで座っている。
「ん?美羽何でスーツ?」
普段と違う格好に直ぐに気が付く俺。
「今日先輩と午後外出しなくちゃいけないんだ。でも私あんまり好きじゃ無いんだよね。動き辛い。」
髪の毛を後ろで括って白シャツのボタン上二つを外して着ている姿に暫く目が離せない。
首から鎖骨にかけての華奢なライン。
横を向く度に見え隠れする後れ毛の出ているうなじにドキッとする。
そして内心その先輩が男の人では無い事を願っていた。
するとチラッと俺を見ながら美羽が。
「拓は今日はバイト?夕御飯どうする?」
「あぁ…今日はバイト休みだから多分十八時には帰って来れると思う。」
「そっか。分かった。じゃあ拓の分も用意しておくね。何かあったら連絡入れてね。」
「うん。」
「あっ、もうこんな時間。行かないと。拓も食べた?」
お皿を重ね席を立ち流し台へと運ぶ美羽に続いて俺も最後の一切れのベーコンを口に押し込みながらお皿を手にし席を立つ。
洗面台でお互い隣り同士で歯を磨く姿が鏡に映ると毎回おかしくてくすっと笑う。
歯磨き粉を口周りにつけながら笑う美羽も可愛いくて朝から幸せな気分になる。
さっき起きた時はあんなに不機嫌な俺だったのが嘘の様に。
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