247人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ
続いて私達はわらび餅の有名な店へと車を走らせていた。
わらび餅はお父さんが好きで家の冷蔵庫では割と良く見かける。
味もきな粉や抹茶、みかんやマンゴーなんかが最近出てたりしている。
私はまだきな粉しか食べた事が無いので違う味にも挑戦したいと胸を弾ませていると神谷さんが口を開いた。
「次に行くわらび餅の店なんだけどイートインも出来てしかも食事も頼めるみたいだからお昼ご飯そこで食べる?」
腕時計を見るとそんな時間になっていた。
「そうですね。そこで済ませますか。」
「で、デザートはわらび餅でって感じで。店内で出してくれるわらび餅はあまり時間が経っていないからかなり美味いらしい。口コミに書いてあった。」
「あぁ…お腹が鳴りそう。」
「もう少し待っててね。あと三十分位で着くから。俺ビビりだからあんまり飛ばせないけど。」
「はい。安全運転を望みます私も。」
「それはありがたい。」
「私ドライブなんて久しぶりで。こうやって都会から離れて違う景色見るのも凄く良いものですね。嫌な事全部ここに置いて行っちゃおう。今回神谷さんが連れ出してくれて有り難かったです。」
「そう?俺、感謝されてる?」
「はい。とても。」
「ありがとう…でも…嫌な事って仕事で何かあるの?」
「それなりには有りますけど大した事では無いです。人並み位で。」
「もしかしてプライベート?」
「は…い。」
「それ…少し聞いても?」
神谷さんの落ち着いた優しい声に促されてしまった私は気が付くと自分の話を始めていた。
「私実はあと少しで施設に行く所だったんです。」
「うん…。」
神谷さんは驚かない。
「私のお母さんと今のお父さんが幼なじみで私を引き取ってくれました。」
「そうか。」
「私は当時小六でした。ランドセルと荷物を持ってお父さんの家に行くと私と同い年の男の子が居ました。お父さんも奥さんと離婚をしていて男二人で暮らしていた所に私が来たという事になります。」
「…。」
「二人共私を歓迎してくれて嬉しかったです。私も恩返ししたくて目に付く物気が付いた事全部やりたいと思い家事等を任せてもらいました。中学校、高校生と成長する私をお父さんは温かく本当の子供の様に育ててくれました。だから今の私があります。とても感謝しています。でも…最近弟の拓と上手くいってなくて。」
「同い年の男の子…ねぇ。」
神谷さんはまるで何かを悟ったかのような表情を浮かべ運転している。
果たしてその胸の内は何なのか私には分からなかった。
最初のコメントを投稿しよう!