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一昔前に戻されてしまったかの様な大きな瓦屋根の建物が目に入ってきた。
建物の周りは山と殆どが田んぼで囲まれており先程行ったチョコの店よりも遙かに田舎だった。
そんなのどかな風景をたちまち好きになった私はスマホのカメラで気が付くと何枚も写真を撮っていた。
その日は朝から太陽が雲に邪魔されずにくっきりとしていてスカッと晴れ渡った青空だった為とても美しい景色が撮れた。
一方、店内へ入ろうとして引き戸に手を掛けていた神谷さんはこちらを向いて私を呼ぶ。
「高井さ~ん…あっ、写真撮ってたのか。俺撮ってあげようか?」
私はこの景色が名残惜しくて。
「良いでしょうか?何か都会には無い素敵な景色に心が持ってかれてしまいました。」
うんうんと笑いながら私のスマホを手に取ってその美しい景色と私を一緒に撮ってくれた。
すると撮り終わった神谷さんはこちらに近寄って来るなりジャケットのポケットから自分のスマホを取り出した。
そして私の横に立った。
斜め下から覗く神谷さんのシャープな輪郭が綺麗で見とれてしまう。
「記念に一枚撮っても良い?」
はっと我に返る。
「はっ、はい、良いですよ。」
パシャリと自撮りで私達は記念撮影をした。
「さっ、じゃあ入ろう。本当にペコペコだ。」
思い思いの写真を撮れた所でようやく店内へと足を踏み入れる。
引き戸を開け店内を見渡すと日本家屋の雰囲気は残しつつも今と昔を上手に取り入れお洒落にリノベーションされていた。
人はそこまで混み合っておらず奥にあるイートインスペースも何席か数えられる位に空いていた。
上下白の作業着に紺色の短いエプロンを腰に巻いた定員さんが奥から私達に気付いてはち切れる位の笑顔で出て来てくれた。
真ん中辺りの窓際の席に通され椅子に座るなり真っ先にメニューに目を通す神谷さんは決めるのも早かった。
「俺、豆乳湯葉うどんときな粉のわらび餅。」
私も神谷さんの勢いに乗って。
「私も同じ物で…あ、わらび餅は抹茶にします。シェア出来る様に。」
「そっか。ありがとう。すみませ~ん。」
神谷さんはテキパキと定員さんに注文する。
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