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「神谷さん今迷い無く注文した様に見えたんですけどそれも口コミですか?あ、お腹が空いてたから…か。」
「直感。メニュー見てたらぱっと目に入って来た。」
「わぁ…私には無い物ですそれ。」
「そうなの?」
「はい。色々頭で考えて決めたり行動したりしないと不安で。」
「高井さんは何事にも慎重なんだよねきっと。」
「そうかもしれません。羨ましいです神谷さんが。色々考えても結果答えが出ない時なんて沢山有りますしそれに裂いた時間も勿体ないなって自分でも思うんです。」
「自分で分かっている内はまだ変えられるって。今から考え方変えて直感で生きてみるのも有りかもよ。」
「はい…。」
「意外と俺の直感は当たるって思ってる。」
「神谷さん実はその…皆には無い力があるのでは。」
あはは!と神谷さんは高い声で笑った。
「いやいや、そんなんじゃ無いよ。現に今もその直感の手応えを感じているとこだし。」
私はゆっくりと首を捻る。
また私には神谷さんの考えがピンと来ない。
少し困惑した表情を浮かべていると神谷さんは手を前で左右に振り目尻を下げながら良いから良いからと言わんばかりに私にやって見せた。
間もなくしてモクモクと湯気のたった豆乳湯葉うどんが運ばれて来た。
器の中は真っ白でこれからうどんを食べるとは思えない光景だった。
顔を近付けて香りを嗅ぐと豆乳と出汁の混ざり合った良い香りに食欲が更に湧いてくる。
テーブルにセットされたお箸の箱を開けて神谷さんに渡し私達はやっと食事にありつけた。
神谷さんはズルッと音を立て男らしく麺を啜る。
熱い麺を口に入れては直ぐ次を啜る神谷さんに驚いてしまう。
私が一啜りしている間に神谷さんは三啜り位している早さだ。
「か、神谷さん…火傷しませんか?」
「らぃじょうぶ…ゴホッ。」
「あぁっ、すみません途中で話し掛けたから。」
慌ててセットされた紙ナプキンをガバッと取り差し出すとそれを受け取り口に押さえながら言った。
「お腹空きすぎててさ。欲を剥き出しにしながら食べてた。熱いのなんてあんまり気にならなかった…はは。」
神谷さんの器はもう麺が見えない。
「私も追いつくので。そうだ。良かったらデザートのわらび餅食べてて下さい。」
フゥ…と額の汗を拭い氷でいっぱいのお冷やを飲み干す。
「大丈夫。暫くクールダウンしながら高井さん待ってるからゆっくり火傷しない様に食べな。」
シャツのボタンを二、三個外し深く開いた胸元で頬杖をつきながら満足げに佇む神谷さん。
そんな神谷さんの目の前でまだ沢山残っている麺をどうやって口へ運ぼうかとあたふたする私が居た。
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