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私は緑の景色から少しずつ都会の街に変わって行く景色をぼんやりただ眺めその心の内は今日の晴天には到底敵わない程にどんよりとしたものだった。
そんな景色を眺めていると神谷さんはサービスエリアに入って行った。
駐車場に車を止めエンジンを切ったその時。
「…俺。焦ってたのかもしれない。」
神谷さんがシンとした車内で突然話し出す。
「高井さんにプライベートの話聞きたいと言った時、俺はてっきり男の事で悩んでるのかと思ってたんだ。大体の女性はそうだからさ。その…どうしても…聞いておきたかった。高井さんの男関係を。」
神谷さんに振り向くと横顔がほんのり赤く染まっている。
「私の男関係をですか?」
神谷さんが私のそんな事を知りたいのは…つまり。
「異動して来た時から高井さんが気になってた。俺の事、少しでもそう思ってくれる気持ちがあるんだったら付き合って欲しい。」
神谷さんの私を見る目は真剣そのものだった。
だから私も神谷さんに対する自分の想いを余すところなく丁寧に届けたいと思った。
「神谷さんが異動して来た時席も隣だから会話する機会も多くなってその度に何時も紳士で優しくて大人の男性だなと思っていました。私がそう思うという事は周りの女性もそう思っているんだと思います。たまに神谷さんの良い噂が聞こえてきますし。」
「そうなの?」
頭をポリポリとかく神谷さん。
「そんな風にずっと思っている時に今日こうして神谷さんにドライブに誘って頂いて私はとても嬉しかったんです。」
「ありがとう。」
「朝から今の今迄神谷さんは格好良くて時々可愛くて…。私はそんな風に見ていました。」
「照れる。」
「ドキドキしたり…しました。」
「…。」
「だけど。これは、この気持ちは好きなのか憧れなだけなのか自分はまだ分からないんです。なのでそれが自分の中ではっきりする迄少し時間を下さい。駄目でしょうか?」
「駄目じゃ無し!」
神谷さんはニカッと笑って見せた。
「高井さんが俺に対してきちんと向き合おうとしてくれている姿勢が凄く伝わって来た。大丈夫だよ。高井さんの気持ちが分かる迄待ってる。」
「神谷さんがきちんと気持ちを伝えてくれたので私もそう思ったんです。」
「そういう所も高井さんらしいね。本当に可愛くて良い子に育ったんだね高井さんは。」
頭にポンと神谷さんの手が触れる。
私はまたドキッとしてしまった。
こんな動作も神谷さんだからそうなるんだよね。
でも私は何かを思い出そうとしている。
拓…私の中で拓の手と神谷さんの触れた手が重なった。
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