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「お父さん行ってきます。」
「いってらっしゃい。気をつけて。」
そう言って二人で玄関を出るとエレベーターに向かう。
朝はエレベーターラッシュがありなかなか来ない。
でもこの待ち時間は美羽と二人になれるので苦ではなかった。
「美羽ヒール履いてる?」
「うん。履いてるよ。」
「履いてないかと思った。」
「あぁ…それって私がチビって事を言いたいんだよね?そんなにチビでも無いよ。157㎝はあるんだから。」
「まじ?普通じゃん。」
「拓が大き過ぎなの。昔は私と同じ位だったのにさ…。男の子の成長って驚かされるよ本当に。」
「まぁ父さんもでかいし遺伝だよな。中身は変わって無いけどな。はは。」
「そうだね、拓は昔から拓だね。」
「美羽は…凄い成長した。中身も。」
「え?そ、そうかなぁ?」
「俺とは違って働いてるし…なんか大人だよな。」
拓を見上げると私に優しく微笑んでいた。
私は思わず目を反らしてしまった。
「仕事頑張れよ!」
ポンポン。
私の頭に軽く手を弾ませる。
「おっ、来た来た。」
私達は少しの隙間を見つけてエレベーターに乗り込む。
拓の体に密着した状態で下に下りていく。
私の顔が拓の胸元に触れると拓の鼓動を感じた。
トクトクトク…。
拓の鼓動は今の私の鼓動と同じ位せわしい音を立てていた。
そしてふと私が初めて拓の通う小学校に登校した日の事を思い出す。
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