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鏡を見ると私は拓の筋肉質の長い腕に収まっている。
両腕を掴まれ身動きが取れない。
顔周りを覆っている髪の毛を頬を使いかき分けると息づかいを感じ耳を弄る。
「拓っ、、」
手で何度も腕を引き離そうとするけれどびくともしなくて。
私の慌てふためく様子などお構いなしに拓の柔らかい舌が耳の奥に迄入っていく。
体がぞおっとしてくると同時に体は何故か火照りを感じる。
やがて耳から首筋へと唇を這わせながら下りていく。
頭がぼぉっとして拓の腕を引き離そうと力の入った手がいつの間にか下にダランとだらしなくぶら下がっている。
拓の右腕が私から離れたと思いきやその手は迷うことなく寝巻きの裾からするりと侵入し私の腹部を触る。
くすぐったさと恥ずかしさが押し寄せ、けれど拓の手はとても温かく私は拓に触れられれば触れられる程余計に体が熱くなっていく。
円を描くように這う手が左腹部を通りその真上にある私の左胸が拓の手に包まれた。
下着の下からもまるでシルクを纏った滑らかな手が膨らみを捕える。
「…っつ。」
そんな中フッと目の前の鏡の自分に目が合った。
何て顔してるの私は…。
瞳を潤ませだらしない口元をした見たことの無い知らない女が映っている。
そしてその女の体をしつこく求めるこの人は…弟、、
「拓っ!辞めっ…て、拓、」
ハッと我に返り声を上げて抵抗する。
手に思い切り力を入れて拓の腕を離そうとするけれどやはり無理だった。
そんな些細な抵抗など男の拓にはかなうはずもなく諦めかけた時。
「神谷さんにも触られたの?」
耳元で拓が呟く。
「かっ、神谷さんにって…私達まだそんな関係じゃ無い…し。」
拓の手が止まる。
「そう…。」
一言そう言うとさっきまでの勢いが嘘のように私の体からすんなりと手を離した。
肩を掴まれお互い向き合うと今度はフワリと優しく抱きしめられた。
私の肩に顔を埋める拓。
「ごめん…ごめん美羽…。」
すると今度は許しを求める。
今にも消えそうな声で。
ずっと一緒に居たけれど泣いている拓を私は初めて見た。
そうだ。
私が昔拓の前で泣いたあの時は拓が私を何も言わずに抱きしめてくれたよね。
でも今は違う。
拓が泣くから。
どうしてこんなに悲しそうに泣くの?
そんな弟を放っておけなくて。
肩で小さく泣いている拓を覗き込むようにして。
私はそっと頬に唇を当てた─────。
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