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拓は私が唇を離すと涙で濡れた目を丸くして驚いた表情をしていた。
拓と暫く見つめ合う。
私の好きな優しい拓の目元が少しずつ近づいてくる。
その目に見とれている間に気が付くと拓の唇が私の唇を覆っていた。
舌が絡み合う度に私は少し逃げてしまうけれど拓はすぐに捕らえて再び深く絡ませる。
どうしてこんな事をしているのか。
何でこんな風になってしまったのか。
姉と弟の関係なのに。
朦朧とする頭の中で自問自答する。
だけど────。
拓に触られた私の肌は喜びを覚え熱を帯びた。
そして振りほどけないのは拓が男でかなわないからじゃない…大切…だから。
私は拓が大切…それだけは揺るぎない。
「っはぁ…。」
十分に私を味わったその口が顔から離れると今度は軽く唇だけのキスをして拓は自分の部屋へと戻って行った。
一人取り残された洗面台で乱れた呼吸を整えようとするけれど頭の中は拓で一杯で何度も深呼吸をしても鼓動は早いまま。
蛇口から水を勢い良く出し床が濡れるのも気にせずに顔を目がけてバシャバシャと浴びせかけていく。
はぁ…。
ようやく少し落ち着きを取り戻した私は洗面台の扉をそおっと開ける。
さっき拓に大きな声を出してしまったのでリビングで寝ているお父さんに聞こえてしまっていないか心配になり足音を立てない様に見に行くとお父さんはスヤスヤと寝入っていた。
安堵した私はまだぼぉっとする頭で自分の部屋に向かった。
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