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「おはよう高井さん。」
私が出勤すると既に神谷さんがデスクに居た。
「おはようございます。神谷さん昨日は美味しい物が食べられて楽しかったです。運転もして頂いて。」
「本当楽しかったよね。晴天で窓からの眺めも最高だったし…何と言ってもあのわらび餅はインパクトあって忘れられない。今日にでもまた食べに行きたい位だよ。」
嬉しそうに話す神谷さんは無邪気な子供みたいだった。
けれどコロリと表情を一変させる。
「あのさ。弟君…何か言ってなかった?」
「え?拓ですか?特に何も。」
「そっか。」
「あぁ、でもどっちが優勝するかワクワクしてます私。」
「ん?」
「いや、あの野球の。」
神谷さんは最後拓との会話を忘れてしまったのだろうかピンときていない表情でこちらを見ている。
「いえっ、大丈夫です。はは。」
パソコンの電源を入れると直ぐさま田村さんから電話で頼まれた仕事に取り掛かるため前の席の田村さんのデスクに書類を取りに行く。
デスクに山積みになっている書類の中から何とか見つけ引き抜こうとすると山がグラグラと揺れ始め慌てて上から押さえる。
「田村さんデスク片づけないからなぁ。はは。」
斜め前の神谷さんが私の顔を見て呆れた口ぶりで言うと昨日のあの神谷さんをふと思い出した。
急に恥ずかしさが押し寄せると私はバッと下を向き書類を引き抜いて席に戻った。
横に居る神谷さんは何時もと何も変わらず爽やかな神谷さんだった。
返事を待ってもらう事になっているけれど、そのつもりでいたのだけれど昨夜の拓との出来事で私は余裕が無くなっていた。
「美羽!」
一花から連絡をもらいたまたま実家に居るとの事だったので私はお土産の生チョコが一箱余分に冷蔵庫に有るのを思い出して仕事帰りに一旦家に寄ってそれを渡しに二人で会った。
「おばさん、今晩は。」
「あら!美羽ちゃん久しぶりね。最近顔見れなかったから嬉しいわ!」
ショーケース越しに相変わらず優しく微笑む一花のお母さん。
「私も会えて嬉しいです。あっ、そうだ。出掛けた先で美味しそうな生チョコ買って来たので後で皆さんで食べて下さい。一花に渡しておきますね。」
「えっ!そうだったの!?美羽ありがとう。」
一花に生チョコを手渡し私はまたショーケースのケーキを頂ける事になったので今日はショートケーキを選ばせてもらった。
金色に縁取られた白いお皿にショートケーキとフォークをのせてもらって二階の一花の部屋へと階段を上がる。
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