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「可愛い~。美羽ちゃんって言うんだね。漢字も美しい羽で美羽なんて憧れちゃうよ。」
「顔と名前がぴったりだよね。お人形さんみたい。」
転校生の私はやはり皆には珍しい様であっという間に机の周りには人だかりが出来た。
「美羽ちゃんは芸能人誰が好き?」
「あ、えっと○○君。」
「ドラマ見てるよ!格好良いよね~!」
「うん。」
「え、美羽ちゃんってケーキ好き?」
「好き。」
「本当!?家ねケーキ屋なんだ。今日遊びに来てよ。一緒にケーキ食べようよ。」
「う、うん。」
一花ちゃんは最初に仲良くなった友達で私を登校した初日に家に招いてくれた。
私は授業が終わり一旦家に帰ってから一花ちゃんの家へ向かった。
歩いて五分位の距離にあった一花ちゃんの家はこじんまりとしてはいるけれどレンガの外壁がお洒落で入り口付近に色取り取りのお花が飾られていて私を歓迎してくれている様で嬉しくなった。
なんか明るい一花ちゃんみたい…なんて思いながら店の扉をくぐる。
「美羽ちゃん!待ってたよ。」
「一花ちゃん…うわぁ…綺麗なケーキが沢山。」
ショーケースに並ぶ沢山のケーキは全部が宝石みたいにキラキラ輝いていた。
「こんにちは美羽ちゃん。一花の母です。一花の言ってた通りお人形さんみたいね。可愛い。」
「でしょ?多分うちのクラスの男子達皆美羽ちゃんに一目惚れしちゃったと思うな。」
「はは…そんな事無いよ。」
「そうかもしれないわね。これだけ可愛いかったらね。あ、そうそう美羽ちゃん。この中から気に入ったケーキ一つ選んで良いわよ。一花と中で一緒に食べてね。どれにする?」
「え…良いんですか?こんな綺麗なケーキ。」
「良いの良いの。これ位の事しか出来ないから。家はさ、お店やってて忙しいから一花と中々遊んであげられなくてね。だからこれからも一花と仲良くしてやってね。」
優しく微笑んで私にそう言った一花ちゃんのお母さん。
一瞬だけ私のお母さんが笑っているみたいに重なって見えた。
「───。」
「ん?美羽ちゃん?迷ってる?」
一花ちゃんが横から顔を覗き込んできた。
はっと我に返る。
「う、うん。迷っちゃうな。どれにしようかな…。」
とショーケースに目線を戻した時お母さんの好きだったチョコレートケーキが目に入った。
「チョコレートケーキ…食べたいな。」
「はい。チョコレートケーキね。うん、今用意するわね。」
すると再び私に優しい笑顔を向けてくれた。
胸の奥があったかくなるのを感じた。
こんな気持ちになれるなんてもう私には二度と無い事だと思っていたのに。
胸の奥から広がった温もりは体中迄行き渡ってそのせいで自然と涙が溢れた。
こんな場所で泣いたりしたら皆心配すると思ってこっそり深呼吸をして溢れた涙を引っ込めた。
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