episode 4

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「出掛ける時に部屋に鍵忘れたみたいで焦って美羽に電話しただけ。でも鞄の奥に入ってて…仕事中にごめん。」 「そうだったの。うん。全然大丈夫…。」 「…?」 今迄見てきたどんな男性よりも格好良くて綺麗な拓からなかなか目が離せない。 拓よりも年上で大人な神谷さんよりもずっと…ずっと素敵に見えてしまった。 拓の襟元で動く私の肌を滑らかに這っていった長い指先がまた私の鼓動を早めそして息が浅くなるのを感じ体が火照り始める。 ──────── 頭の上で私に向かって囁く誰かの声が聞こえた気がした。 はっとして勢い良く息を吸い込んだ。 「そう、そう言えば拓一花と会ったんだってね。私チョコのお土産渡しに一花の家に行ったんだ。久しぶりに拓の姿見て驚いてたよ。格好良くなったって。」 「ふ~ん。」 「あぁ…聞いたよ!え、何、何か二人でケーキ屋さんのネット販売やろうって計画してるんだってね。」 こちらに振り向く拓は無表情だった。 「一花がね拓は頭も良いし一緒にやれるの楽しみにしているみたいだよ。」 ベッドの上に無造作に置かれたネクタイを手に取り鏡の前で首に巻き合わせる。 「拓との話が面白くてまた直ぐ会いたいって…言っ…。」 まだ首にぶら下がった状態のネクタイのままこちらに近付いてくる。 私の顔の目の前は拓の胸が視界を阻んでいた。 ゆっくりと上を見上げると拓は私を見下す様に、そして少しからかうような口調でその整った口元を動かし始める。 「俺もさ驚いたよ。橋本すんげぇ垢抜けて美人になってて誰だか分かんなかったから一瞬逆ナンされたかと思ってテンション上がった。美羽よりも断然大人びたよなぁ。」 「そう…だよね、うん。本当にその通り。」 「昔はただの女友達としか見てなかったけどあんな風にガラッと変わってたらこちらも意識せざるを得ないもんだな。」 「うん…。」 「橋本また俺に会いたがってるって?」 「…。」 「嬉しいっ…てか照れるって感じかなどちらかと言ったら。魅力的な橋本は今の俺には相当やばいからな…。」 何も言えず黙りこくる私に対し拓はネクタイを指で弄びながら煽る様に続けてくる。 「ん?美羽どうした?俺の話つまんなかったのか?」 「…その。拓は一花の事凄く褒めるけど気になってるの?」 「う~ん。そうだなぁ。綺麗な女を見れば単純に男は目が行くしな…気になる?」 更に拓は煽る事を辞めずに上から目線だけを下げて私を見下ろす。
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