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「お父さんのプレゼントかぁ。」
神谷さんが頬杖をつきながら呟く。
午後十五時過ぎ。
仕事が一段落した私は神谷さんとコーヒーを飲みながらおしゃべりをしている。
あの後一晩中考えても納得いく物は思いつかずお父さんと神谷さんでは年代が違うけれど同性の意見が聞きたくなりそれとなく神谷さんに聞いてみた。
そんな神谷さんはこの前の事が無かったかの様に普段と変わらぬ接し方をしてきてくれるので私は安堵していた。
まだ現役で働くお父さんに通勤鞄やネクタイなどは既にプレゼント済みだった。
良くある食べ物を送るという案は私が当日手料理を用意する為却下。
となると…やはり迷ってしまう訳で。
「…じゃあさ、鞄やネクタイ、それから食事系が選べないとなると実際デパートとかに行って自分の目で色々見て来た方が何かしら出会いがあるかもよ。あっ、そうだ、はいこれ。」
お財布の中から商品券と印刷された紙を三枚差し出す。
「これ三千円分あるから足しに使って良いよ。」
「三千円なんてもらえないですよ。」
「良いからもらって。俺スーツ買う時位であんまり使わないからさ。」
「で、でも…あ、じゃあご飯ご馳走します。この前仕事手伝って頂いたお礼もしたいので。」
「本当に?あ、じゃあさお父さんのプレゼント買いに俺も一緒に行くってのはどう?同性の意見も必要でしょ?で、その後飯行こう。どうかな?」
「はい。分かりました。じゃあ来週の…」
私は鞄の中から手帳を取り出す。
「日曜がお店の定休日でバイト休みだったな…」うん、日曜日にしよう。
パラパラとページをめくり独り言を呟く。
「神谷さん日曜日はどうですか?来週の。」
「え?何か今バイトとかって聞こえたけど。」
「そうなんです。友達のケーキ屋さんでバイト始めて。」
神谷さんは驚いた顔で私を見る。
「ええっ!?休日も働いてんの?体大丈夫なの?」
「大丈夫です。一人暮らしの為の資金調達です。長くはやらないですから。」
「それなら安心したけど。あんまり無理しないようにね。じゃ、来週の日曜日よろしく。」
話が終わると私達はパソコンに向き直り仕事に戻った。
そして後からふと思う。
神谷さんへの思いが中途半端なそんな時にキス迄してそして私はまた二人で出掛ける約束をしてしまった。
神谷さんが普通に感じ良く振る舞ってくれるその空気感に私は上手く乗せられてしまうのだった。
とにかく今度はあんなムードにならない様にしなくてはいけないと自分にしっかりと言い聞かせるのだった。
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