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「あっ、時計をちょっと。」
「はい。でしたら今流行りのこちらのブランドのペアウォッチはいかがでしょう。」
カチャカチャっとショーケースを開けるなりささっと大きさの違う二つの時計を出してきた。
余りの手際の良さに口を挟む暇も与えてはくれなかった。
白の手袋をつけた手でスルリと私と神谷さんの腕に時計を通した。
「お二人共良くお似合いです。」
私と神谷さんは顔を合わせずには居られなかった。
お互いが眉毛を下げて少し困った顔をしている。
その正面ではニコニコと微笑む営業スマイル全開の店員さん。
まぁ確かに会社にも普段使いにもして行けるシンプルな時計。
素直に可愛いと思ったし私は好きなデザイン。
「こちらは非常にシンプルでどんなファッションにも合いますので使い勝手が抜群な所が好評頂いております。」
私も同じ様に思っていたそんな時神谷さんはスルリと自分の方の時計を外した。
「彼女似合ってますよね。俺もそう思います…けどすみません今日は彼女のお父さんの時計を見てただけで。」
「はっ、失礼致しました。どうぞごゆっくりご覧下さいませ。」
そう言うと私の手から時計を外してペコペコと何回も頭を下げた。
その後ひと通りお父さんに似合いそうな時計をショーケース越しから見せてもらった私達は時計コーナーから財布、眼鏡ケース等細かく色々見て回り結果やはりさっき見たお店のスマホケースが一番しっくりときたのでそれをプレゼントする事に決めた。
お店に戻り店員さんにラッピングしてもらっていると神谷さんが御手洗に行くと言ってお店を出た。
私はお会計を済ませると近くの椅子に腰を下ろし入れてもらった紙袋を眺めながら満足げな表情を浮かべ神谷さんを待っていた。
神谷さんの言う通り実際にこの目で沢山見た方が良い物に巡り会えるものなんだなと納得が出来た。
お父さん喜んでくれると良いな。
するとカツカツと向こうから歩いてくる神谷さんは手に何かを持っている。
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