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注文して十分位で二つの蒸籠を両手に持った
店員さんがテーブルへと運んで来た。
私は蒸籠の蓋に手を掛けると神谷さんの動きに合わせるようにゆっくりと開ける。
ふぁっと白い湯気が立ち上り向かい合わせで座っているお互いの顔が瞬く間に見えなくなった。
「この湯気がまた食欲そそるんだよな。美味そう。」
「本当ですね。そうだ。違うお店なんですけど中にフカヒレが入ってる小籠包もあるんですよね。」
「そりゃ豪華だな。高そうだけど試しに一度は食べてみたいかも。」
「そんなに高く無かったですよ。私でも払えるランチ代金でした。」
「そうなんだ。なんか高井さんと話すと食べ物の話題が多いよね…料理も好きなの?」
「まぁ料理は嫌いじゃ無いですね。お父さんも拓も作った物を美味しいって食べてくれるのが嬉しくて。だから今度の誕生日に何を作ってあげようかなって今から考えてます。お父さんも拓もお肉は大好きなのでメインはお肉で。」
「へぇ~。高井さんの手作り料理が食べられて弟君が羨ましいな。」
物欲しげな顔で私を見ながら小籠包をパクリと口へ運ぶ。
「そう言えば弟君はもう高井さんが家探ししてる事知ってるの?」
「お父さんには話したんですけど拓には直接は言ってません。なんだか話し辛くて。なのでお父さんから自然と耳にしてくれたらって思ってます。」
「そっか。」
神谷さんはレンゲの中で小籠包の皮を破いて口に入れるとライスをお箸に山盛りに乗せて豪快に口に入れた。
モグモグと頬を膨らましながらリスの様に可愛い食べっぷりのそんな神谷さんに目が離せないでいた。
神谷さんと何回か食事をした中で今が一番嬉しそうだった。
「嬉しそうですね神谷さん。小籠包美味しいですか?」
「小籠包…?あぁ、美味い美味い。これから楽しくなりそうで余計に美味い。」
ニコリと笑いかけられた。
「これから…ですか?何だか分からないけど。でも美味しいならこのお店は当たりでしたね。」
私は嬉しそうに食べるそんな神谷さんに今日の買い物と同じく満足していた。
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